画/おおさわゆう

医学博士と専門医、どっちのほうが「偉い」のでしょうか

覆面ドクターのないしょ話 第15回
「医学博士」と言われれば、最先端治療に通じた医師なのかなと思うし、専門医」と言われれば、なんだか頼りになりそうな気がする。どちらに診てもらったほうがいい治療が受けられるのか、患者の側としては悩ましいところだ。今回は、次郎先生に、よくわからないこの資格の実態を明確にしてもらいます。

医学博士と専門医、どっちのほうが偉い?

駅のホームに立つとクリニックの看板が自然と目に入る。看板にはこんな風に書いてある。

「〇〇クリニック、整形外科・内科・皮膚科、院長・佐々木次郎、医学博士・日本整形外科学会専門医……」

そのクリニックの一番の得意分野を知る目安がある。それは最初に書いてある診療科だ。たとえば、「整形外科・内科・皮膚科」と書いてあれば、「私の専門は整形外科で、腰痛や骨のことは得意です。さらに風邪程度なら診ますよ、軽い湿疹なら軟膏も処方しますよ」そう解釈できる。

 

用心が必要なのは総合病院並みにダラダラと診療科を羅列してある場合だ。

「内科・内視鏡科・皮膚科・泌尿器科・婦人科・アレルギー科……」

一人でこんなに対応できるはずがない。何でも診れるということは、どれも適当なのではないか、手当たり次第に患者を集め、収益を上げよういう、経営ばかり考えている院長なのではないかと、疑い深い私は考えてしまう。

一方、1つの診療科しか標榜していないクリニックは潔い。「小児科」としか書いてなければ、そこの院長は「こども専門、大人は診ない」という主義だ。

クリニックの看板で、診療科の次に書かれているのは院長の肩書だ。「医学博士」とか「専門医」などと書かれている。読者の皆様はどちらにどのような印象をお持ちでしょうか?

「医学博士」という言葉を聞くと、かなりカッコいい感じがしませんか?

「偉い先生」「博士!」


そんな感じでしょうか? 僭越ながら私も医学博士の端くれです。「カッコイイ!」と私にも言ってほしい……。

私が幼い頃、父の診察室には大きな額縁に入った賞状が飾られていた。学校でもらう賞状より2回りも大きい賞状だった。

「ずいぶんでっかい賞状だな。運動会で1等だったのかな? まさか県大会でもらったとか?」

などと思ったものだが、それは父の医学博士の資格証(学位記)だった。もち運びには不便なほど大きな賞状だったので、よく覚えている。

日本を代表する医学博士といえば、野口英世(photo by gettyimages)

一方、「専門医」と聞いたら皆様どのような印象をお持ちでしょうか?


「プロフェッショナル!」「名医!」

こんな感じでしょうか?

専門医はまさにその道のプロ。消化器専門医は消化器のプロ、循環器専門医は心臓のプロということだ。だからある特殊な治療が必要になったら、専門医を紹介してもらえばいい。

ところで、医学博士と専門医とはどう違うのだろうか? どっちが偉いのだろうか?

実はこの2つの資格、性質が全く異なるものなのだ。たとえば、「同じ花を扱う桜守の樹木医と華道家元はどっちが偉いのか」と訊かれても比較できないようなものだ。