生活が厳しい困窮家庭を救う「子ども宅食」半年の成果

この取り組みを知っていますか
大西 連 プロフィール

ただ、ここで重要なのは、必ずしも金銭的な面だけではない。金銭的な影響としては、1ヵ月に3710円の価値なのかもしれない。

しかし、「子ども宅食の支援を受ける前と比較して、あなたの気持ちの変化はありましたか」という問いに対して、47%が「気持ちが豊かになった」と答え、27%が「社会とのつながりが感じられるようになった」と回答しているのだ。

「平成29年度子ども宅食の利用者に関する調査報告」23ページ

ここにこそ、この事業の意味と価値、成果があった、と言えるだろう。

社会的な「つながり」をどのように作っていくことができるのか、このことは大きなテーマなのである。

 

「子どもの貧困」の本丸

これは、「子ども食堂」の記事のなかでも書いたのだが、「子ども宅食」の支援も「子ども食堂」の支援と同じく、「子どもの貧困」を解決するための最適な答え(最短のルート)ではないだろう。

「子どもの貧困」を正面から解決していくためには、その世帯の所得をあげるような施策(経済給付や就労支援、生活支援等)が必要だろうし、その子どもに対しても教育の機会が得られるような仕組み(学校外教育への支援や給付型奨学金、大学等への進学支援など)を社会(公的・民間)で構築していかなければならない。

それこそ、「子ども宅食」の対象世帯である「就学援助利用者」についてはその対象者を拡げたり、「児童扶養手当受給者」については、たとえば支給金額をあげたりなど、ボトムアップに向けた現金給付等の支援の拡充は、公的な責任として政府や自治体が全力で取り組むべき課題である。

そして、そこから目を背けて「子ども食堂」や「子ども宅食」などの事業に頼って「子どもの貧困」への取り組みをおこなっているとお茶を濁すのは、言語道断である。

特に、子どの貧困率が13.9%(2015年厚労省「国民生活基礎調査」)と、先進諸国のなかでも高い数字の日本において、「子どもの貧困対策」が喫緊の課題であることは間違いがないのだから。

本丸の支援の構想がないなかでNPO等との協働などの相互扶助的なさまざまな実践や取り組みに依拠していくのは社会全体のリスクでもあるのだ。

たびたび、ホームレス支援を例に出して申し訳ないのだが、「炊き出し」や「夜回り」で、ホームレスの人の生活を支えていくことは一般的には出来ない。

あるホームレスの人がその生活をやめてアパートで暮らしたい、と思ったときに、「炊き出し」と「夜回り」でアパート生活につながることは、ほぼない。

ほとんどは、生活保護制度やホームレス自立支援制度(いまは生活困窮者自立支援制度も)などの公的な制度を利用して、アパート暮らしを目指していく。

「炊き出し」や「夜回り」という活動は、ホームレス生活をしている人同士が出会ったり、支援者と当事者が出会ったり、関係性やつながりがうまれたりすること、そして、公的な支援などを必要とする場合にそこに「つないでいく」ことが主な目的である。(もちろん、当然のことながら「命を守る」ということも第一義的にある)

生活基盤を支えていくための「生活保護」などの本丸の公的なセーフティネットがもし存在しなければ、民間の寄付やボランティアベースの「炊き出し」や「夜回り」のみでは限界があり、その人を支えていくことは難しいのだ(特に対象となる人の人数が多ければ多いほど難しくなる)。

「子どもの貧困」も同様である。