1000万円を超えるものも…!知られざる「勲章」売買の世界

集めている人もいるんです
栗原 俊雄 プロフィール

値段が下がることも

さて受章者には、勲章とともに勲記が贈られる。贈られる勲章の種類や、受章者の功績などを讃えるものだ。ここには当然、受章者の名前が記される。そのためか、この勲記はほとんど売りに出ない。筆者は、売りに出ている勲章や褒章は数え切れないくらい見てきたが、勲記はたったの2枚だけだ。名前が出ているだけに、手放しにくいのだろう。

希少性といえば、文化勲章のそれが高い。これは毎年秋だけ、おおむね5人に贈られる章だ。今に残る各章の中で最も新しい(といっても81年前、1937年制定だが)勲章でもある。

対象は「文化ノ発達ニ関シ勲績卓絶ナル者」(文化勲章令)だ。橘の五弁の花の中央に、三つ巴のまが玉が配された意匠である。常緑樹で、古来から珍重されてきた橘は「その悠久性、永久性は文化の永久性に通じる」(内閣府賞勲局)から選ばれた。

 

もとのデザインは桜だった。昭和天皇が桜花は潔く散る武士道を象徴するもの。文化人の勲章としては不適当なのではないか。橘は桜とともに昔から珍重されている、と指摘。さらに『古事記』『日本書紀』の故事を引いて「広く各方面の文化に尽くしたる者のための勲章には、寧ろ(橘が)適当なるべしと云」った結果、現在の意匠になった(『内閣制度七十年史』)。

文化勲章が他の勲章と比べて違っている大きな点は、まず等級がないことだ。選考の方法も異なる。ほかの勲章が、自治体や団体からの推薦者から選別されて決まるのに対し、文化勲章は文部科学大臣の諮問機関、「文化審議会」の「文化功労者選考文科会」が毎年5人程度の候補者を選ぶ。

対象は原則として、文化功労者だ。つまり文化功労者に選ばれることが文化勲章への条件となる。特例として、ノーベル賞受賞者は文化功労者でなくても選ばれる。こうした特殊性ゆえか、明治以来の他の勲章は敗戦後に生存者叙勲が停止されたが、文化勲章は生き残った。

995万円。それが、筆者が見た文化勲章の「値段」だった。くだんのホテルでの即売会である。近畿地方の業者が扱っていた。2010年。それが13年には890万円に下がっていた。「また見られてよかったです」。筆者がそう話しかけると、業者は「良くないよ。早くお嫁に行ってほしい」と笑っていた。その後、会場でそれを見ていない。「お嫁に行った」のだろうか。

前述のように、2003年に勲章制度は変わった。現在、勲章市場に出てくるのは改革前の勲一~八等のものが圧倒的に多い。改革後の勲章には希少価値がある。勲章は原則として70歳以上の人が対象だ。

改革から15年。この先、新しい勲章が市場に出回るのだろうか。