1000万円を超えるものも…!知られざる「勲章」売買の世界

集めている人もいるんです
栗原 俊雄 プロフィール

数万円から1000万円

勲一等宝冠章1000万円。大勲位菊花大綬章500万円。勲一等旭日桐花大綬章240万円。勲一等瑞宝章60万円……。

毎年5月、東京都内のホテルで貨幣や紙幣などの大規模な即売会が開かれる。筆者は毎年取材の訪れる。目当ては勲章だ。国が値段を付けられない勲章が、ここでは商品として売買されている。先に見たのは、そこで値が付いていたものだ。

勲章は、特定の個人を顕彰するためのものだ。別人が買ってもその栄誉を得るわけではない。また、軽犯罪法第一条の規定により、勲章はそれをもらった本人以外、着用することはできない。それでも需要があってこその供給だ。勲章には熱心なコレクターがいるのだ。

筆者は会場で品定めしている50代の男性に話を聞いたことがある。「なぜ集めているのですか?」。そのサラリーマン氏の答えは「きれいだから」。

こうした大規模な売り立て市だけでなく、実は街中の骨董品店でも勲章は売られている。筆者が初めてそれを見たのは10年ほど前。東京都のある区の店だった。ガラスケースの中に並ぶ勲章は、正式にもらうには庶民には縁遠いものだ。しかし下位の勲章は数万円のものがあって、背伸びすれば買えなくはない。

 

筆者は買ったことはないが、多くの種類の勲章を売買の現場でみてきた。主なもののうち、見たことがないのは最高勲章である大勲位菊花章頸飾と、軍人に贈られる金鵄勲章の最高である、功一級である。いずれも、極めて少数の人にしか贈られないものだ。特に金鵄勲章は敗戦によって廃止されていて、この先復活の見込みもないだけに、希少性が高い。

業者によれば値段をつける目安は、この希少性とのこと。他のコレクション同様、マニアの需要はそこにあるのだろう。「勲一等」もその一つだ。前述のように2003年の改革でこれはなくなった。再度の改編がない限り、「勲一等」の勲章はもう生産されない。しかも、下位の勲章に比べてもともと希少性が高い。

たとえば「勲一等宝冠章」は皇族や外国の王族クラスに贈られるものだ。さらに宝冠章はもともと広く女性を対象とした章だったが、同年の改革で「外国人に対する儀礼叙勲など特別な場合に、女性のみ」授与されるものとなった。

具体的には皇族や外国人叙勲の場合を指す。つまり対象者がずっと減ったのだ。筆者が見た「勲一等宝冠章」=「1000万円」の高値にはそうした背景がある。

今上天皇が退位の意向を明らかにしたことで、天皇の職務が改めて注目された。様々な「公務」があるが、日本国憲法が定める天皇の「国事行為」は、「国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命すること」「国会を召集すること」など13しかない。「栄典を授与すること」はその一つであり、日本国にとって勲章はそれだけ重たい。

その重たい勲章を、だれが手放すのか。

勲章の売買にかかわる複数の業者に取材したところ、もらった本人が手放すことはあまりない。子どもや孫の世代になると売りに出されることが多いようだ。