2017年6月に誕生したジャンアントパンダの子ども「シャンシャン」。4月15日に307日齢を迎えて体重は24.7kg、ますます愛くるしい仕草を見せてくれている。GW中も大混雑が予想され、5月3~6日のシャンシャンの観覧は、またも抽選。なかなか狭き門だ。
しかし、シャンシャンの抽選に外れたとしても、上野動物園には、見ておくべき動物がたくさんいる。なんと上野動物園に現在いる動物の大半が、レッドリスト(絶滅危惧種)に指定されているというのだ。
世界中の絶滅危惧種のリサーチを進めている国際自然保護連合日本委員会(以下IUCN-J)副会長の道家哲平氏は、ある日上野動物園の絶滅危惧種について資料を作ることにした。その時の経緯を次のように語る。
「絶滅危惧種についてわかりやすく伝えようと資料を作っていたときに、上野動物園の動物の配置マップと絶滅危惧種にマーキングをしてみました。そうしたら、驚くことに、ニホンザルなどの一部の動物以外、ほとんどの動物に印がついてしまったのです。
絶滅危惧種というと、特別なもの、名前も姿も見たことがない珍獣と思っている方も少なくないようですが、昔から親しんでいるよく知っている動物が実はレッドリストに上がっています。
ニュースでは、なかなか大きく報道されないことですが、動物園はそういった絶滅危惧種の問題を子どもといっしょに考えることができる場所でもあるのです」
そもそもレッドリストとは、一体なんなのだろうか?
“レッドリスト”
この言葉をニュースでたまに目にするが、その実態をきちんと説明できる人は少ないだろう。また、誤解も多く、民間団体の過激な動物保護活動団体がリスト制作に関わっているのではないか、と思っている人も少なくないという。
「レッドリストは、IUCN(International Union for Conservation of Nature)=国際自然保護連合という団体の『種の保存委員会』が中心になって作っています。この種の保存員会は、世界中の研究者7500人が集まり、さらに、民間団体、政府による調査がひとつに集約されて作られています。
種の保存委員会には、日本人の研究者も100名以上関わっています。日本自然保護協会が日本の窓口であるIUCN日本委員会の事務局中心として、外務省、環境省、17のNGO団体、専門家などと連携しています」(道家氏)
「欧米が主導権を握って勝手にリスト化しているのではないか」とか「故意に日本に対して批判的な評価をするために絶滅種を選んでいるのではないか」と言われることもあるというが、実は多くの国が参加し、厳密に決められていると道家氏はいう。
「そもそもレッドリストは、“社会に対して自然の状況を警告するリスト”です。そのリストを元に、政府や関係機関に法律でその生き物を保護する動きが展開されたり、国際条約での保護が生まれたりするためのリストになっています。みなさんもよく知っているワシントン条約などもそれにあたります。
現在、地球上には、約3000万の生物種が存在していると考えられています。IUCNは、名前がついている既知種173万種のうちのデータのある91,523種を分析し、そのうち25、821種を絶滅危惧種に分類しています。驚くことに、評価した種の35%が現在絶滅の危機に分類されたのです。
しかも、このスピードは加速しています。日本国内のレッドリストの状況を見ても、ここ20~30年で、生態系が大きく変わっていることが変わってきているのです。その理由は複合的ですが、外来種の増加、乱獲、気候変動などが考えられています。
ただ、唯一明確なのは、私たち人類の進化とともに、他の動物や植物たちの危機が加速しているということです」(道家氏)