「労働時間は短い方がいいか」問題につきまとう、残業代という「魔物」

真の働き方改革に向けて
大内 伸哉 プロフィール

残業代の出ないサービス残業(もちろん違法)はかつては蔓延していたが、最近はきちんと残業代を払う企業が増えている。残業代が払われる残業ならどうなのか。

このとき、理性では残業に反対しながら、残業代という魔物から逃れられない労働者のアンビバレントな姿勢が話を難しくするのだ。

いま政府が進めようとしている法改正は、残業(法定労働時間を超える時間外労働)の上限を明確にしようとするものだ。

 

これまでも残業の上限はあったが、それに違反しても罰則はなく、また臨時的な特別の事情があれば限度時間を超えることが許されており、その場合の上限はなかった。

これでは規制が緩すぎるということで、今回の改正では、残業の上限時間を1ヵ月45時間、1年360時間とし、それを罰則付きで強制することにした。

さらに例外的に限度時間を超える場合について、これまではなかった残業の上限規制を設け、休日労働の時間を含めて1ヵ月100時間未満(複数月の1ヵ月平均で80時間以下)、1年720時間以下(休日労働は含まず)とした。

〔PHOTO〕iStock

政府にとって残業代増は良いこと

ところで、残業は、事業場ごとの労働者の過半数代表(労働組合か個人)が三六協定を締結して労働基準監督署長に届け出てはじめて合法となる。

このことは、過半数代表には、三六協定の締結を拒否したり、残業時間を限定したりするという強力な武器が与えられていることを意味する。

ところが現実には、この武器はあまり行使されていない。そこから判断すると、やはり労働者は本気で残業をいやがっていないようにも思える。残業代という魔物に取り憑かれているのかもしれない。

ちなみに政府は残業代が増えるのは良いことだと考えている。労働者の収入が増えれば、消費が増え、経済成長が期待できるからだ(労働組合顔負けの賃上げ要求を経済界にしているのもこのためだ)。

その意味で、政府の残業に対する姿勢のほうは明瞭だ。

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