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宇宙を支配する「たった1つの数式」があるって知っていました?

高校の物理では習わない、この世界の秘密
物理学、ましてや素粒子と言われると難解という印象を抱いてしまう人も多いと思うが、そんな素粒子物理を題材にした小説『「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた』が好評だ。著者の橋本幸士さんに、「究極の物理」を鑑賞する方法について寄稿いただいた。

「物理って、難しいですね」

自己紹介で「私の専門は物理学なんですよ」というと、9割以上の人たちの反応は、眉間にしわを寄せた顔なのだ。「高校の時は、物理が苦手で」「計算ができなくて」といった言葉が次に続き、次第に僕との距離が広がっていく。

そこで、僕は言うのだ。「超ひも理論って、聞いたことあります? この世界がすべて小さな”ヒモ”から出来てる、っていう物理学の仮説なんですよ。3分で説明します、聞きませんか?」

3分ならいいかな、という笑顔が戻り、「いいですよ、本当に3分なら」という答えが返ってくる。僕の正念場の3分間が与えられた。

 

「この宇宙のすべては、”素粒子”って呼ばれるツブから出来てる、そしてその種類は少なくとも17種類ある、って、人類は見つけたんです。人類って、すごいですよね。で、その中には、光のツブ=”光子”も含まれているんですよ。ところで、なぜ光が存在しているんでしょうね。これは哲学的な問いに聞こえるかもしれませんが、現代科学の問題なんです。

超ひも理論なら、この根源的な問いに答えてくれる。光には偏光という特殊な性質があります。これは、光の飛んでいる方向に垂直に、光が振動している現象です。これを使って、たとえば映画館で3D映画を楽しめるわけですよ、右目と左目に異なる偏光の映像を入れるようなメガネをつけて、ね。

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なぜ光には”偏光”という性質があるんだろう。もし、素粒子が小さなヒモだったとしますよね。点とヒモの違いは何だろう。そう、ヒモなら振動できるということが違う。つまり、偏光の性質を持った素粒子が自動的に現れるはずなんですよね、超ひも理論なら。

もちろん、科学的に正式な手続きは、ヒモの運動方程式を使って、光の伝搬を表すマクスウェル方程式を導出しないといけない。それが出来ているんですよ。超ひも理論、すごいでしょ。

宇宙には重力もありますね、重力の存在も、超ひも理論は説明するんです。昨年、ノーベル物理学賞が『重力波の検出』に与えられましたよね。え、知らない? そうなんですよ、アインシュタインが100年前に予言した重力波がついに捕まったんです。重力の波は、空間を伸ばしたり縮めたりするので、トンネルにレーザー光を飛ばして縦横の距離を測ることで、重力波が来た!ってわかる仕組みです。

ところで輪ゴムの形のヒモを考えると、縦に伸びたら横に縮む運動しますね、これは重力波とそっくりですねぇ。ということで、閉じたヒモの振動は重力を表すんです。

こっちも、もちろん、科学的に正式な手続きは、ヒモの運動方程式を使って、アインシュタインの相対性理論の重力の方程式を導かないといけない。それも、出来ているんです。しかも、米谷さんという日本の大学院生が、世界で初めて導いたんですよ。シャークさん、シュワルツさんと独立に。

でもね、素粒子が実はヒモだった、って実験で確認した人はいないんです。だから、世界中の科学者が、素粒子の正体を突き止めようと、研究してるんです。僕はそのひとり」

超ひも理論の3分講義を終えたら、大抵の人は、目がすごく開いている。この宇宙も人間も、じつは素粒子というツブから出来ている。そして、それは、小さなヒモかもしれない。そう考えることは、人間をあっという間に非日常に連れ出し、広大な宇宙と微細な原子の世界へと導いてくれるのだ。

粒子が構成する宇宙イメージphoto by iStock

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