「パワーセックス」で議員を籠絡? 米国「ロビイスト」日中韓の実力

いちばんカネをかけている国は…
海野 素央 プロフィール

超富裕層が影響力をふるう

ロビイング活動を監視する米国のNPO団体「センター・フォー・レスポンシブ・ポリティックス」によれば、2017年のロビー活動に関する支出額は33億6000万ドル(約3622億円)で、1998年と比較すると約20億ドル(約2156億円)も増加しています。

またロビイストの登録人数は、1998年は1万404人でしたが、2017年は1万1502人と1000人以上増えました。全米で最もロビー活動の支出額が多い団体は、米国商工会議所(1998-2017年)で約14億ドル(約1509億円)になっています。

では、なぜこれほど、米国社会ではロビー活動が定着しているのでしょうか。

 

米国では、「司法省に登録した個人ないし組織が、特定の政策について議会や政府に圧力をかけて政策決定に影響を与える行為」が、合衆国憲法と民主主義の立場から合法になっています。合衆国憲法修正第1条は、政府に苦情処理を求める請願権を認めています。それに加えて、ロビイングは市民による「参加型民主主義」であるという観点からも支持を得ています。

ただし、ロビイングにはもちろん弊害もあります。巨大財閥「コーク・インダストリーズ」を経営するコーク一族など、特定の超富裕層がロビイストや政治献金を用いて、政策決定プロセスに影響を及ぼしています。

多数の一般市民の声ではなく、少数の特定の声のみが政策決定に反映される状況は、民主主義の理念とは程遠いものです。

日本のロビー活動は不調

さて、今回の日米首脳会談で、日本はトランプ政権がかけた鉄鋼やアルミニウムに対する関税の除外国に入れてもらえませんでした。

さらに、日本はトランプ氏を環太平洋経済連携協定(TPP)に引き戻すこともできませんでした。日米首脳会談での共同記者会見における記者団からの質問に、トランプ大統領は「2国間による貿易協定の方が多国間よりも有益である」と強調しました。

このような状況をみると、日本の対米貿易に関するロビー活動は、成功しているとはとても言えません。

トランプ大統領の言動を変えるためには、同大統領と近い関係にある上下両院の共和党議員に積極的に働きかけて、日本側の立場を大統領に主張してもらう必要があります。

ただ、それにはリスクも伴います。

日本側が鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置の除外を強く求め過ぎると、トランプ大統領は「日米自由貿易協定の早期交渉開始」を取引材料に出してくる可能性が高まるからです。

結局、11月6日の中間選挙の前までに、このような取引に持ち込まれるリスクに直面している日本は、ジレンマから抜け出せない状況が続くことになります。