「パワーセックス」で議員を籠絡? 米国「ロビイスト」日中韓の実力

いちばんカネをかけている国は…
海野 素央 プロフィール

もちろん「裏のルート」も…

では、どのようにしてロビイストは政治家に働きかけているのでしょうか。

正攻法から紹介しますと、まず連邦上下両院の議員ないしスタッフにアポントメントをとります。通常は、ターゲットとなる議員事務所のホームページから、希望の日時、ミーティングの場所(ワシントンないし地元)、議論する法案などを記入し、アポイントメントの予約を入れます。

その際、議員の日程を調整する「スケジューラー」と呼ばれるスタッフが対応にあたります。

研究者として筆者は米連邦議員と親交を深めていますが、経験から述べると、スケジューラーと信頼関係ができると、直前でも日程を調整して議員とアポイントメントをとってくれることがあります。通常、1回のアポイントメントの時間は30分ですが、これも議員とのパイプが太くなると、状況にもよりますが45〜90分くらい時間を割いてくれます。

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アポイントメントが取れると、次はミーティングです。議員ないしスタッフに、通過させたい法案や阻止したい法案を取り上げ、どうしてその法案が選挙区の有権者に必要なのか、あるいは不必要なのかを説明し、説得します。

その際、ポイントになるのが選挙区の有権者の声です。というのは、議員は地元の有権者の声に敏感に反応するからです。従って、通過させたい法案や葬りたい法案を支持する選挙区の有権者を利用して、議員に影響を及ぼす手法もあります。

例えば、オバマ大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)に反対するロビイストであれば、その議員の選挙区で活動する、反オバマ色が強い保守系市民運動「ティーパーティー」に働きかけることができます。選挙区において彼らの声が大きくなれば、議員はそれに耳を傾けざるを得なくなるからです。

ロビイングには、もちろん「裏ルート」も存在します。

ワシントンは権力志向の街です。たとえばワシントンでは、権力者が同席する昼食を「パワーランチ」と呼びます。「パワータイ」は、権力を誇示するような真っ赤なネクタイを指します。トランプ大統領は、鮮やかな赤色の長めのネクタイを好み、「自分が権力の中心にいるのだ」というメッセージを発信しています。

特定の法案に関する議員の票を獲得するために、女性のロビイストが議員と性的関係をもつこともあります。「パワーセックス」です。

通常、議員はロビイストからのギフト(贈り物)を受け取った場合、倫理委員会に報告する義務があります。米国では、議員が女性ロビイストとセックスをした場合、それを「ギフト」とみなし報告をするべきか否かが議論になっているほどです。

 

トランプの常套句「あいつはロビイストだ」

このように盛んなロビー活動が行われている米国ですが、米国においても、ロビイストには「議会で裏工作をしている」という否定的なイメージが付きまとっています。ワシントンにおける政治腐敗の原因が、企業や団体、外国政府によるロビー活動であるとみられているからです。

事実、米国人の中には、家族や親戚の職業を聞かれた時、ロビイストとは答えずに、コンサルタントと回答する人が少なくありません。これも、ロビイストという職業に伴うイメージと関係があります。

トランプ大統領が政敵を攻撃する際、しばしばロビイストと結びつけることも、そのイメージの悪さの証といえるでしょう。

たとえばトランプ大統領は、ネット通販最大手、米アマゾン・ドット・コムのジェフ・べゾス最高経営責任者(CEO)と対立していますが、自身のツイッターで米ワシントン・ポスト紙を「アマゾンの首席ロビイスト」と呼んで非難したことがありました。

べゾス氏率いるアマゾンは、トランプ大統領がフェイク(偽)ニュースと常々呼んでいるワシントン・ポスト紙を所有しています。トランプ氏は、「ワシントン・ポスト紙の記者は、アマゾンの利益を代表して記事を書いているロビイストのようだ」と言いたいわけです。