中退、引きこもり、貧困、発達障害…暗闇のなかの歩き方を支援する

【特別対談】鈴木大介×安田祐輔
鈴木 大介, 安田 祐輔 プロフィール

居場所は「幸せ」への足がかり

安田:そうですね。僕、本のそのページ折ってます。すごく好きなところで。

鈴木:結局本人がそこにいていいって自分で思えて、人にも思われてるっていう場所を見つけると安心ですよね。その安心っていう土台があってそこから初めて幸せの追求ができるんではないかと。そこをすっ飛ばすとどんなに稼いでもどんなに派手に遊んでも、どんなに高価なものをかき集めても、全然幸せって感じられないみたいなんです。

安田:ないですね。不登校・中退の子は学校も友達も居場所になっていないケースが多いです。生育環境が良くない子ももちろんたくさんいますし、引きこもりになると親も焦ってメンタルやられちゃうことが多いので、そうすると家にも居場所がなくなってしまう。

それで僕は「受験」をエサみたいな形にしたんです。中学校行けなくなって、でも高校は行かなきゃとか、高校中退しちゃって高卒認定試験取らなきゃとか焦ってる子が「受験」って検索してくれるので、そういう時に我々のような「居場所」を見つけて来てくれたらいいなと。

我々のところは働いている人が全員不登校や引きこもりの理解者なので、そこがまず彼らにとって居場所になるっていうことが大切かなと。だって本人が何とかしたい、居場所がほしいと思っても「居場所」って検索しないと思うんですよね。自分の人生が「何かやばい」と思った時に。

写真:柏原力

鈴木:そうですね!

安田:塾のスタッフも半分ぐらい元引きこもりで、理解者しか採用してないので。ここがひとつ居場所にはなるだろうなとは思ってます。でも一方で親の代わりにはなれない。僕も親からきちんと養育を受けなかったので、今もう34歳になってもその課題を抱えてるんですけど。

親って恋人とも違うし塾の先生とも違って、例えば友達関係だったらそいつの財布から1万円2回ぐらい盗ったら絶縁されるわけじゃないですか。だけど親だったら2回盗ってもまだ「何やってんの!」って怒られるだけですむ。それで家から追い出すっていう親はそんなにないと思うんですよね。だから何をしても許してくれる存在=親って。

そこが欠けるっていうのは絶対的な居場所が欠けてることだなと思います。親が100ぐらいのパワーがあるとしたら、それが欠けても友達や大学などで居場所を作って、1のパワーを100個集めようみたいな。量で補うことができればいいかなと思います。そうやって色んな人に助けられたっていう経験があると少しずつはまともになるのかな、居場所ができたと思えるのかなと思んです。

鈴木:安田さんにとっては、今それが現状の仕事というか事業なわけでしょうか。

安田:そうですね。僕自身の場合は自分のやってきた生きてきた経験を肯定するための物語を作るしかなくて、だからこういう仕事をせざるを得ないところはあります。とはいえ100点の解決策だとなかなかまだ思えてない部分もあって、生まれた時からの決定的な欠落を埋めるっていうのはなかなか難しいなと思います。

鈴木:そうですね。確かに、面倒見た子たちが社会に出た後に、同じように居場所までを一緒に探してあげるっていうのは難しいかもしませんね。でもその選べる選択肢を増やすっていうことは確かに必要で、選択肢を増やしながら居場所を探していくことが大事なのかもしれないぞということはぜひ教えたいですね!

安田祐輔(やすだ・ゆうすけ)1983年横浜生まれ。不登校・中退・ひきこもり・うつ・発達障害・再受験など、もう一度勉強したい人のための個別指導塾「キズキ共育塾」などを経営するキズキグループ(株式会社キズキ/NPO法人キズキ)代表。発達障害によるいじめ、一家離散、暴走族のパシリ生活などを経て、偏差値30からICU(国際基督教大学)教養学部国際関係学科入学。卒業後、大手商社を経て2011年に「キズキ共育塾」開塾。多くの講師が挫折経験をもち、生徒の心によりそう指導が評判を呼び、全国から様々な理由で学校に行けない若者やその親から問い合わせが殺到、多くのメディアに取り上げられる。2018年4月現在、全国に5校(代々木・池袋・秋葉原・武蔵小杉・大阪)。外出困難者のためにスカイプ授業なども展開。また、中退予防のための大学への講師派遣・研修、貧困家庭の子どもの学習支援プロジェクトなども立ち上げ、多岐にわたり若者を取り巻く社会問題を解決する活動をおこなう。著書に『暗闇でも走る 発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の塾をつくった理由』(講談社)。

発達障害に加え、父のDV、一家離散、家なし、非行……暗闇から抜け出す手段は唯一勉強だった。偏差値30から一流大学合格、日本初の大規模な不登校・中退者・うつ・ひきこもり・発達障害をもつ若者の進学塾を起業。いま注目の社会起業家が、生きづらさを抱えながらも輝く場所をつくりあげていくまでの記録。 今の状況から抜け出したくても方法がわからない方、不登校・ひきこもりのお子さんを持つ親ごさん、進路に迷う学生の方、人生を変えたいすべての方へ、一歩を踏み出すヒントとなる一冊。  

【編集部と著者より書店様へのお願い】現状、『されど愛しきお妻様』はノンフィクション棚に置いてくださる書店様ではよく売れていますが、医療棚に置かれてしまうことが多いようで、そちらは販売が苦戦中です。本書は、「家庭内の障害受容」の話でもありますが、それ以上に世の中のあらゆる「すれ違い夫婦」に届いて欲しい、どうしたらお互いに優しくなれるのかのメソッドを描いた本でもありますので、どうか配本位置をノンフィクション棚にして下さいますようにご配慮いただければありがたい限りです。