なぜ銀行はダメになったのか?エリート行員たちが忘れてしまったもの

パラダイムシフトを迎えて
浪川 攻 プロフィール

その後、彼の活動は銀行内で広がって、みずほは避難所となっている南相馬などの小中学校に膨大な数の絵本を配ってまわった。これは、避難所にいる子どもたちにとても喜んでもらえた。

しかし、システムトラブルを引き起こした直後のことである。みずほはこの活動をマスコミに伏せた。

 

私は結局5年間ほど福島に通い、仮設住宅に避難中の女性たちに古着を活用した手作り商品を作成してもらい、それを首都圏で販売していた。

このとき、休日返上で販売会場の外でビラ配りをしたり、レジ周りの作業をしたり、あるいは職場の仲間に商品購入を呼びかけたり、一緒にやってくれたのがメガバンクなどの広報担当者たちだった。

私が彼らの銀行について批判的な記事をいくら書いてもやってきたが、彼らは自分たちの行動を世間には隠し続けた。会場にマスコミの取材がくると、彼らはひたすら目立たぬようにしていた。

一般には金融機関関係者は冷たい印象をもたれがちである。実際にはそんなことはない。ビジネスでも「ウォームハート」でいたいと思っている。現に、狭域で活動している中小金融機関のなかでも、いわき信組などが事業で示している。

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もし、メガバンクなどの銀行がそれをできないのならば、おそらく、経営の仕組みに何か桎梏を抱えてきたからだろう。

今、銀行業界で動き出したデジタル技術導入によるビジネスモデルの転換はその何かを変えるインパクトになりうる。

このたび上梓した『銀行員はどう生きるか』では、銀行改革のエッセンスとともに、その「何か」を探り出そうとしたつもりでいる。

もっとも、それもこれも銀行経営者の資質と覚悟の問題に尽きるのだけれど。

読書人の雑誌「本」2018年5月号より