世界の音楽市場の足を引っ張っているのは、日本の音楽業界だった

どうしてこうなったのか
柴 那典 プロフィール

2月末にSpotifyが公開した上場申請書類によると、2017年12月期の売り上げ高は40.9億ユーロ。全世界のユーザー数は1億5900万人、うち有料ユーザーは7100万人だという。

こうしたストリーミング配信サービスは、再生回数に応じた売り上げをアーティストやレーベルに配分している。

ダウンロード市場が大幅な縮小に向かう一方、Spotifyは楽曲の再生1回あたり平均で約0.5円をアーティスト側に支払っていると言われ、ストリーミング配信のみで着実に収益を得るアーティストも増えつつある。

ヒットの基準は「買われた回数」から「聴かれた回数」となり、音楽業界のエコシステム全体がストリーミングを前提にしたものに変わりつつある。

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ビッグデータ活用がもたらすもの

アーティスト側から見たSpotifyの特徴は他にもある。

再生回数に応じた収益だけでなく、自らの楽曲のリスナーの数や属性をフィードバックとして得ることができるのである。

昨年秋にSpotifyはアーティスト向けのアプリ「Spotify for Artists」を公開した。

これを用いることで、アーティストは自身のリスナーの年齢、性別、居住地域などの属性、他にどんなアーティストを好んで聴いているかといった情報も把握することができる。

これらの情報は従来もウェブサイトのアーティスト向けページで確認することができたが、モバイル環境でも分析が可能になった。

特にアーティストやマネージメントにとって重要なのは都市単位でのリスナー数だ。これを分析することによって、ツアーを組む際にも各都市での動員をある程度予測することができるようになった。

興行ビジネスは水物だと長らく言われてきたが、現在はこうしたビッグデータを活用することで、より確実性の高いライブビジネスを行える時代となっている。

 

世界最大手のライブエンターテイメント企業であるライブ・ネイションは、先日、2017年の業績を発表した。

通年の売り上げ高は前年比24%増の103億ドル。7年連続で過去最高を更新し、世界的なライブエンターテイメント市場の急成長を裏付けた。

10年前、多くの人は「違法ダウンロードによって人々は音楽にお金を払わなくなる」と語っていた。「音楽業界は斜陽産業だ」と予測していた。

5年前、「これからは音源ではなくライブで稼ぐ時代」と言われるようになった。

しかし、その予測はどちらも間違っていた。2017年はレコード産業もライブエンターテイメント市場も活況に沸いた1年となった。

現在、世界の音楽産業に訪れているのは「ストリーミング配信が多くのアーティストに収益をもたらし、そのビッグデータを活用してより確実性の高い興行ビジネスが可能になった」時代なのである。