世界の音楽市場の足を引っ張っているのは、日本の音楽業界だった

どうしてこうなったのか
柴 那典 プロフィール

一方、日本ではストリーミングの市場規模は263億円とシェアはいまだ全体の9%ほどにとどまり、CD、DVD、Blu-rayなどパッケージメディアの売り上げが全体の80%を占める。

ダウンロードも加えた有料音楽配信の市場規模は573億円で前年比8%増と好調だが、2320億円で前年比6%減を記録したパッケージメディアの生産額の落ち込みを補えていない。

ここ数年、ストリーミング配信の普及と共に「所有からアクセスへ」という音楽消費の潮流の変化が起こっているが、日本では「売れない」と言われ続けるCDがいまだに市場の主軸を占めている。

そのことが市場の停滞の最大の要因だ。日本についでCDセールスの割合が高いドイツが前年比0.3%減となっているのも同じ要因だろう。

 

ただ、これまでビジネスモデルの転換が遅れ他国の後塵を拝してきた日本の音楽市場も、この先は回復への道を辿るだろうと思われる。

一部のレコード会社が反発し日本での事業開始までに時間を要したSpotifyも、2016年秋に日本でのサービスを開始して以降、ドリームズ・カム・トゥルーや宇多田ヒカルなど大物アーティストの楽曲提供もあり認知度を広げている。

では、そもそもなぜストリーミング配信の普及が世界各国の音楽市場の回復に結びついたのだろうか。

〔PHOTO〕gettyimages

利用者1億5900万人、有料会員7100万人

それは、Spotifyが設立当初に持っていた「より便利な合法サービスを提供することで違法ダウンロードを駆逐する」という理念が着実に形になったからだと言えるだろう。

Spotifyが本国スウェーデンでサービスを開始したのは10年前の2008年。当時は違法ダウンロードによる権利侵害が世界的にも大きな問題となっていた。スウェーデンでも当時ファイル共有検索の最大手パイレーツベイが2009年に有罪判決を受けている。

そんな中、広告モデルによる基本無料配信と定額制配信を組み合わせたフリーミアムのモデルで成功したのがSpotifyだった。

決め手となったのは違法サービスに対しての技術的な優位性。再生遅延の問題を解消したことで、わざわざ海賊版サイトを検索して違法ダウンロードするよりも手軽に音楽に触れることができるようになった。

Spotifyの創業者ダニエル・エクはファイル共有ソフトμTorrentの開発者でもあり、P2Pの技術をサービスに応用したことがその背景にあった。

結果、本国スウェーデンでは違法ダウンロードや海賊版サイトの利用が激減。レコード産業の売り上げ拡大に寄与した実績もあり、イギリスでは2009年、アメリカでは2011年と各国にサービスが広がっていった。

「音楽ファンに『アーティストに対価を支払うこと』の意味を実感させ、音楽業界を再成長させる」というSpotifyの理念は、着実に成果を生んできた。