米国帰りのあの人が「アメリカ人っぽくふるまう」のには理由があった

ただ単に"かぶれた"だけでなかった
藤田 結子 プロフィール

差異を認め、尊重することが大切

要するに、冒頭の日本人の若者たちも、「アメリカ人らしさ」を達成しようと競争をしている。アメリカで暮らしていると、成功するためには英語や文化の面で「アメリカ人らしく」なることが重要だというメッセージをあちこちで受け取るからだ。

だが日本人の仲間が自分よりも「成功」に近づくと嫉妬や不安を感じるので、「アメリカ人らしさ」を達成しようとする仲間を批判する。

もう1つの理由は、アメリカでは多様な文化的バックグラウンドの人々に接する機会が多く、日本人としてのアイデンティティをしだいに意識するようになることだ。

この若者たちは、英語を流暢に話してアメリカ人らしいふるまいをしたいと望む一方で、日本人らしさを大切にしようとするどっちつかずな、アンビバレントな心情にあるといえるだろう。

だからこそ、日本に帰国した後も、会話に英語をちりばめてアメリカ人らしさを誇示したかと思ったら、日本文化のよさや武士道について熱く語ったりするという、周囲の人々にとっては「うざい」行動を取るのである。

そんなアメリカ帰りの人たちの体験を知ると、無理して人に合わせるよう強いられるのは苦しいことだとわかるだろう。多様な人が生きる社会では、他者との差異を認め、尊重することが重要なのだ。

アメリカで大変な体験をした人は、他者の立場を以前より理解できるようになるだろう。グローバル化やダイバーシティが進む時代には、そのことが大きな強みにもなる。多様な背景を持つ人々をつなぐ役割をぜひ担って欲しい。

*日本企業の駐在員はまた別の話である。なぜなら現地の支社は日本人が中心の場であるからだ。また、駐在員たちは日本に呼び戻された後のキャリアのために、習慣、言語、外見上の「日本人らしさ」を維持しようと心がけていることも先行研究で明らかになっている。