米国帰りのあの人が「アメリカ人っぽくふるまう」のには理由があった

ただ単に"かぶれた"だけでなかった
藤田 結子 プロフィール

名門大学の教授たちは、高度な英語についてこれない学生は留学生でも容赦はしない。それどころか、「アメリカ人並みに英語ができるようになるまで努力しなさい」とはっぱをかける。誰もがアメリカに残って成功したがっている、と信じているようだ。

しだいにストレスがたまってきた健一さんは、大学の日本人会に居場所を求めるようになった。ここなら自分が中心になれるし、日本人女性たちは自分の話を聞いてくれるので癒やされるのであった。

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「アメリカ人らしく」というプレッシャー

なぜ現地の学校に通う日本人には、大変な思いをしてでも、アメリカ人っぽくふるまおうとする人がいるのか。それはアメリカ社会では、「アメリカ人らしく」することが成功への道だと考えられているからだ。

この「アメリカ人らしさ」とは何か。それは、ミドルクラスの白人が話す英語を流暢に話したり、彼らが適切と思う服装をしたり、クラシック音楽に親しんだりというようなミドルクラスの「アメリカ人らしさ」である。同じアメリカ人でも、ヒスパニックや黒人のアメリカ人の文化や話し方のことではない。

 

キングスカレッジのリチャード・ダイヤー教授によると、欧米では常に白人が社会の頂点にいて、「有色人種」は外見・能力・文化において劣っているとみなされる。白人であることが人間の「標準」なのである。

アメリカ合衆国の場合、国家建設の過程で「アメリカ人」という概念は「白人」として構築された。このことが、黒人の従属を正当化し、移民を同化してきた。

しかし最近では、香織さんの話のように、黒人のファッションやライフスタイルを模倣する若者が世界中にいる。

1990年代以降、ヒップホップカルチャーがさまざまな分野に影響を与えていて、今では音楽やファッション、映画などで流行の最先端を行くブラックカルチャーのイメージが広まっているからだ。裕福な家庭で育った白人のティーンエイジャーにはラップ音楽のファンも多い。

だがサブカルチャーの場ではなく、メインストリームの社会で成功するには、やはりミドルクラスの白人のようなふるまいが求められがちだ。

カリフォルニア大学バークレー校ジョン・オグブ元教授によると、貧困層の黒人の子どもたちは、「標準」英語を話したり、学校の規則に従ったりという白人の文化規範を自分たちのマイノリティとしてのアイデンティティや結束を脅かすものと考える。

そして、仲間が白人のように「いい子」のようにふるまおうとすると、プレッシャーをかけて妨害する。だがアメリカでも、社会的に成功するうえで学業達成はとても重要なのである。

このような人種関係もあって、ヒップホップカルチャーには「ワルさ」を誇示しようとする側面がある。それが「かっこいい」と、日本人の若者もまねするのだ。