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米国帰りのあの人が「アメリカ人っぽくふるまう」のには理由があった

ただ単に"かぶれた"だけでなかった

アメリカ帰りの知人の様子に驚いたことはないだろうか。アメリカに数ヵ月から数年の間暮らして日本に帰国した人が、英単語を会話にまぜたり、服装が変わっていたりというようなふるまいである。これは、単に「アメリカにかぶれた」というわけではない。アメリカ社会の複雑な事情が関係しているのだ。

 

「Yo!」と挨拶する日本人

大輔さん(仮名、20代半ば)は以前からニューヨークでアートに関わる仕事をすることを夢見ていた。まずは現地で英語学校に通いながら、仕事を探そうと渡米した。ところが、現地の英語学校に通い始めた当初、日本人学生たちの様子を見て驚いたという。

「彼らのこと、『日本人アメリカ人』って、僕は内心呼んでいます。どっちにもなれないっていうか。語学学校行っている人の8割はそうですよ。『敬語を話さないこと』が、ニューヨーカーの始まりだと思っている。初対面なのに『Yo!』とかいって呼び捨てにしてくるし、『アメリカまで来て社交辞令なんてきもいよね』とかいうんです。それがかっこいいと思っているらしくって」

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同じ頃、専門学校生の香織さん(仮名、20代前半)は将来ダンス教師として生計を立てるために、本場ニューヨークに渡り、ダンススクールに通い始めた。現地で日本人の知り合いが増えていくうちに、あることに気がついた。香織さんはこう語る。

「ブラックカルチャーとかラップが好きな人が多いですね。みんなびっくりするくらい草食ってる(=マリファナを吸っている)。日本にいるときからやっているって話で、それがかっこいいと思ってるみたい。そういうことを真に受けて、『俺のマイライフ』とかラップの詩に書いたりしているんですよ」

このようにアメリカで学校に通う日本人の若者の一部には、「アメリカ人らしい」話し方やふるまいをしようとする様子が見られる。その一方で、大輔さんや香織さんの話のように、「アメリカ人」っぽくふるまうと日本人の仲間うちで「あいつはおかしい」と批判されることがある。

日本のエリートもアメリカでは疎外感

「アメリカ人らしく」ふるまおうとするのは、語学学校や専門学校に通う若者に限ったことではない。政府や企業から派遣されて大学院でビジネスや公共政策など学ぶエリートたちにもそういうケースがときどきある。

政府機関から派遣された健一さん(仮名、20代後半)は、名門大学の大学院で学び始めた。しかし、教授たちはものすごい早さの英語で難解な授業をするので、英語に自信があった健一さんでもよくわからない。

焦った健一さんは英語力を高めようと、日本人とはつるまず、大学院ではつねに英語で話すことを心がけた。また、アメリカ文化になじもうと、なるべくアメリカ人か日本以外の国から来た学生たちと一緒に行動しようと努めた。しかし、アメリカ人の輪に入っていくことはなかなか難しい。

「放課後、宿題のグループワークをするんです。でも、早口で話すアメリカ人たちにまったくついていけない。彼らは、私がその場にいても、私の英語力にあわせてゆっくり話すなどの気遣いはみじんもありません。自分から積極的に話せない相手は無視されます」

健一さんは、自分を空気のように扱うアメリカ人クラスメートたちの輪から少しはずれて、ぽつんとたたずむことが多かった。日本の組織ではいつも中心的な役割を担っていた健一さんのプライドは傷ついた。