富裕層の資産を預かる凄腕バンカーに、聞きたいこと全部訊いてみた

どうすればなれる? ホントに儲かる?
杉山 智一 プロフィール

金融動向に応じてリスクコントロールを

――次の質問です。

「本書では、ハイイールド債(高利回り債。利回りが高く設定されている反面、元本割れのリスクが高いとされる)での運用も紹介されていますが、ハイイールド債にレバレッジをかけた場合、たとえばリーマン(ショック)時には、一時的に40~60%のマイナスとなっていたと思いますが、このリスクについてはどのようにお考えでしょう?」

杉山 おっしゃる通り、2008年9月のリーマンショックの時には、ハイイールド債ファンドもそのくらい急落しました。そこはリスクコントロールするしかありません。この場合のリスクコントロールというのは、要するにレバレッジを半分にするとか、あるいは全面的に解除する、などといったことを指します。

ただ、リーマンショックにしても、リーマンブラザーズが破綻する1年前の07年8月にはパリバショックが起きており、また、08年3月にはベア・スターンズへの公的資金注入も行われています。

当時、私たち金融関係者の間では、この公的資金注入があった時点で「次はリーマンが危ないぞ」という危機感は広く共有されており、実際その半年後に破綻しました。

要するに、リーマンショック級の事態であろうと、何の前触れもなくある日いきなり崩れるわけではありません。その間にレバレッジを半分にするとか、さらに危ない局面が予想されるならば全部外してしまうなどのリスクマネジメントはできるわけです。

幸いというべきか、ここ7年ほどはポートフォリオを変更する必要には迫られておりません。2015年のチャイナショックでは、原油価格などが急落しましたが、あの時はポートフォリオを現状維持としても特にマージンコール(追い証。追加で入れる保証金)がかかったりはしませんでした。

もちろん、それを上回るリーマン級の事態が来るならば当然何らかのリスクコントロールをしなければいけませんが。

「何を、いつ買うか?」を見極める

――続いての質問です。

「国内で買えるハイイールド債の種類と、どこで買えるかを教えていただけますか?」

杉山 それはハイイールド債ファンド(単独のハイイールド債ではなく、複数のハイイールド債をパッケージ化した投資信託)を含めて、ということでしょうか? 日本でハイイールド債やハイイールド債ファンドを扱っている金融機関としては、フィデリティ投信などがありますね。

ただ日本の場合、気をつけなければいけないのは、日本によくある「毎月分配型」、つまり分配金の出る投資信託の場合、利回りがマイナスになると元本を取り崩して分配する「タコ足分配」になってしまう点です。これだと実質的な配当がいくらなのか、非常に分かりづらいですよね。

こういう商品は海外にはないのですが、なぜか日本では売ってもいいということになっています。

また、日本で売られているハイイールド債は円建てですが、もともとドル建てのものを円建てにしているので、為替ヘッジ分のコストもかかっています。

私もよく顧客から「なぜ米ドル建てで買うのか? 米ドルはリスクじゃないのか?」と聞かれるんですけど、実際は円建てのほうがコスト負担が大きいわけです。

ですから、フィデリティでハイイールド債を購入する場合も、外国企業の銘柄ならば素直にUSドル建てで買ったほうが得です。日本の銘柄にこだわるのであれば、ソフトバンクの利回り6%程度のハイイールド債を、SBI証券や楽天証券が販売していますね。

この債券を買うかどうかはソフトバンクと孫正義さんを信用するかどうかですが、私自身は高く評価していますし、自分でも少し保有しています。債券の場合は、発行元企業が倒産さえしなければ元本が戻ってきますからね。

本書の中(112ページ)に、日本企業が外貨建てで発行している債券の一覧を付録としてつけておきましたので、そちらなどもご参照いただければと思います。

 

――同じ方からの質問です。

「米国の高配当株式、たとえばAT&TやP&G、ファイザーなどを長期(一生涯など)持つスタンスについては、どう思われますか?」

杉山 いわゆるウォーレン・バフェット方式ですね。もちろんアリだと思いますよ。ブルーチップ、つまり優良銘柄に中長期投資をするというのは投資の王道でもありますし、株中心の運用をするならば、そのほうがいいと思います。

ただそのやり方自体はいいとして、何をいつ買うかは重要だと思います。

たとえば、いくらアップル株が優良銘柄とはいえ、スティーブ・ジョブズもいなくなってしまったこれからのアップルの成長性を考えると、いま買う意味はそれほどあるのか、という問題がありますよね。

これも本にも書いたことですが、販売時の価格から数年で価値が10倍になる「テンバガー銘柄」を、10倍に跳ね上がる前に探す、つまり次のアップルや次のAT&Tを探しに行くスタイルの方が、中長期の資産形成には向いていると思います。

さらにもうひとつ言えば、私自身の根本的なスタンスとして「資本主義は今後も続いていくし、世界経済は成長を続けていく。その前提に立って運用しましょう」というのがあるんですね。

個別の優良銘柄を長期保有するのはいいと思いますし、それで実際に資産も増えるとは思いますが、この前提に立つならば分散投資、つまり世界経済全体の成長を取り込めるやり方の方が、面白みはなくてもストレスから開放されると思います。