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『ノストラダムスの大予言』なんでみんな信じちゃったのか

山本弘×片山杜秀×大槻ケンヂ

今振り返ると冗談みたいな話だが、公害問題に資源の枯渇、核戦争勃発の危機に直面した当時の日本人は、子どもから大人まで本気で人類の滅亡を信じていた。

『ノストラダムスの大予言』
73年に祥伝社から発行された五島勉氏の著書。フランスの医師で占星術師のノストラダムスが著した『予言集』について、伝記や逸話を交えて解釈するという体裁をとり、当時の日本でベストセラーとなった

仰天し、絶望した

大槻 『ノストラダムスの大予言』が祥伝社から出版された1973年当時、僕は小学2年生でした。ある日、母親が「ケンちゃん、'99年で人類は滅亡するのよ」って言うんです。

「ええっ、そうなの!」と仰天しました。残りの時間を計算して、「ああ、自分は33歳で人生を終えるんだな」と絶望的な気分になったのを覚えています。

片山 私は当時小学4年生で、学校ではやはり話題になっていました。本を読んでいたのは私を含めてSF好きの生徒数名でしたが、「ノストラダムス」という名前はクラス中が知っていた。

大槻 「ノストラダムス」という名前はインパクトがありますよね。もし『ピエールの大予言』だったら話題にもならなかったんじゃないかな。「ノストラダムス」が言ってんだぞ! って水戸黄門の印籠のように使えそうな強い響きです。

 

片山 私の場合、出版当時の生々しい感覚がその後も残っていたから、会社に就職しなくてもいいやと思ってしまった。

大学院までいっても'99年に人類は滅亡するだろうから、30代まで好きな研究(政治思想史、音楽評論)でもして暮らそうと思っていたら、意外に続いているから困ったなと(笑)。

山本 私は'73年に高校2年生でしたが、当時は冷めた目で見ていました。

でも、その後『ノストラダムスの大予言』をはじめとしたトンデモ本に触れる中で、あまりにもめちゃくちゃなことが書かれているのが逆に面白いと感じ始めたんです。

みんなが予言を信じている状況でひとり「けしからん」なんて言っていてもつまらない。だから逆に笑ってやろうと思ったわけ。ノストラダムス関連本をひたすら集めて、紹介していくということを始めました。

大槻 それで、山本さんは「と学会」(世間のトンデモ本などを紹介する会)を設立されたんですね。「と学会」によってツッコミ文化はずいぶん発達しました。