中国のLGBTはいま、こんな差別を受けている

ゲイ、腐女子もあやうく禁止の恐れアリ
安田 峰俊 プロフィール

無理解丸出しの横断幕

冒頭のシャオミのスピーカーの暴走事件は、こうした社会的風土ゆえに生まれたものだ。他にも、昨年4月に湖北省武漢市の華中科技大学内で「中華民族の伝統的倫理をまもり、社会主義核心価値観を毅然として防衛し、西側の腐敗した思想の浸透に反対し、同性愛から距離を置いたキャンパスを作ろう」という横断幕が掲げられるなど、社会の無理解を示すエピソードには事欠かない。

ただ、近年は先に挙げた『同志之声』や、『同性恋親友会』などの情報発信プラットフォームや互助コミュニティができたり、開放的な地域である上海では同性愛の相互理解促進イベント「シャンハイ・プライド・ウィーク」が民間主導で開かれたりと、徐々に変化の兆しも見えつつはある。シャオミ事件についても、『同志之声』が微博のアカウント上で暴露をおこなったことで、結果的にシャオミ側の謝罪を引き出している。

『同性恋親友会』のホームページより、イベント時の記念写真。より保守的な気風が強い地方都市の同性愛者との交流など、様々な活動を進めている

腐女子もゲイもご法度に?

だが、中国において同性愛をはじめとした性的少数者を阻む壁は、社会の無理解だけにとどまらない。かの国の場合、さらに「政治」というファクターが絡むためだ。共産党政権自体が多文化共生の概念を理解しておらず、また保守的な社会主義イデオロギーによる「同性愛は腐敗した習慣」という概念が払拭されきっていないため、あらぬ圧力が掛けられることが少なくないのである。

例えば今年4月13日に話題になったのが、4億人のユーザー数を誇る大手SNS「微博」(中国版のツイッター)を運営する新浪が、政府の意向を受けて、ポルノや暴力表現と列挙する形で同性愛に関係する内容の漫画やショート動画の削除方針を打ち出したことだった。

 

ここで挙げられたご法度表現は「腐(BL)、基(ゲイ)、耽美(耽美系表現)、本子(薄い本=同人誌)」だった。BLと耽美系の線引きはどこなのかという疑問も残るが、とにかく二次元か三次元かを問わず、主に男性の同性愛的表現が規制対象になったのである。AFPによれば、新浪微博は新たに制定されたサイバーセキュリティ法を遵守する形で、13日のうちに5.6万件以上のコンテンツを削除したとされている。

(なお、中国では1990年代に海賊版コンテンツを通じて一部の同人誌や成人向けゲームを含めた日本のマンガ作品が流入し、少なくとも2001年ごろにはすでに「腐女(フゥニュィ:腐女子)」という概念が知られていた。かなり裾野が広い分野である)

だが、この決定にはネット世論が大反発。「#我是同性恋(私は同性愛者だ)」というハッシュタグを付けた投稿があふれ、このタグが微博の禁止ワードに設定されてからも抗議の投稿が続いた。

結果、14日に党中央機関紙『人民日報』は性的少数者の受容を容認するべきだとする内容の声明を微博に投稿。16日にはついに、新浪が同性愛関連のコンテンツの削除方針を撤回することになった。近年の中国のネット世論関連の話題ではめずらしく、ネット世論側の反発が党や(その意向を受けざるを得ない)大企業の方針を覆した形だ。