日本人が知らないモスクワの「驚くべき噂と都市伝説」に迫る

地下に「何か」がある…?
小泉 悠 プロフィール

伝説3:クレムリン周辺ではカーナビが狂う?

これは比較的新しい噂で、2016年の夏頃にモスクワのタクシー運転手たちが最初に気づいた現象であるという。

最近、モスクワではスマートフォンでタクシーを呼び出せるアプリが普及し、タクシー事情が一気に改善した。

以前は道端で白タクを捕まえて値段交渉をするのが一般的であったが、これら新世代タクシーでは搭載されたタブレット端末で目的地までのルートを検索し、その場で料金も表示されるので、ぼったくりの心配もない。

ところが、その際に必要となるGPSの位置表示がクレムリン周辺では狂ってしまうというのだ。

〔PHOTO〕gettyimages

しかも、その狂い方はちょっとした誤差というものではない。モスクワ都心に居るにもかかわらず、数十キロメートル離れたドモジェドヴォ空港やヴヌコヴォ空港が表示されてしまうのだという。

タクシーアプリを開発しているロシアの大手IT企業「ヤンデックス」が調査したところによると、このような誤差が出る原因はクレムリン宮殿内部にあるようだ。

GPSの位置情報を狂わせる偽電波が発信されており、そのせいで正確な位置情報を取得できなくなっているのだと見られている。

クレムリンを警備する連邦警護庁が保安措置として実施していると考えられており、プーチン大統領の公邸周辺や出張先でも同じ現象が報告されている。

では、何故、クレムリン付近の位置情報を空港付近と偽る必要があるのか。

 

多くのマスコミ報道では、これをドローン対策と結びつけるものが多いようだ。

というのも、ドローンが空港上空に侵入すると航空機の離発着を妨害することになるため、ドローンの制御システムは空港上空を避けて飛行するようにプログラムされている。

これを逆手にとって、空港であるかのように見せかけることでドローンがクレムリン上空に侵入できないようにしているのではないかという。

今年3月にはシリアに展開するロシア軍部隊が自爆ドローンの集中攻撃を受けるという事案が発生しており、クレムリンの警備当局としてはこうした事態を恐れているのだろう。

また、最近ではロシアの反体制派活動家がドローンを飛ばしてメドヴェージェフ首相の豪華な別荘やぶどう園を上空から撮影し、インターネット上で公開するという新手の反政府活動が大きな反響を呼んだ。

こうした内外の脅威に対して張られた見えない防衛線が思わぬところで市民生活に影を落とした恰好と言える(現在ではクレムリン周辺でのGPS妨害は解除されているとも言われる)。

今回、モスクワに関する3つの伝説を紹介した。ロシアはまだ訪れるのが少々面倒であるが、噂や都市伝説からでも興味を持っていただけたら幸いである。

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