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「ママはダメね」祖母のひと言が、母と子どもを追いつめる

世代間連鎖を防ぐ子育て論〈10〉

子育てに正解はない。が、ひとつ言えるのは、祖父母が過度に孫の子育てに介入するのは、あまりよいことではない、ということだ。親子の問題に詳しい臨床カウンセラーで、『母・娘・祖母が共存するために』の著者・信田さよ子氏が、「祖母の子育て介入問題」について論じる。

結婚できない息子(娘)はかわいそう

この数年、「少子高齢化」という言葉を目にしない日はありません。これは国の経済や政策の問題だけにとどまらないでしょう。人口の約3分の1が65歳以上の高齢者で占められるという事実は、家族にも大きな影響を与えているのです。

「少子化」「高齢化」にもうひとつのキーワード「非婚化」を加えると、カウンセリングで出会ういくつもの家族の情景が思い起こされます。

カヨコさんは60代も半ばを過ぎているけれど、まだまだ元気でエネルギー満々、週3回程度の気楽なパートに行っています。パートでは仕事をまじめにこなし、雇用主から重宝されているようです。

夫は定年退職後、子会社・孫会社と移り、毎日会社に出てはいきますが、以前よりは時間ができたため、空いた時間は大学の公開講座や図書館通いで忙しいといいます。

 

カヨコさん夫婦の悩みは、同居している、30代半ばの息子と娘のことです。2人とも、結婚する気配がないのです。

「身を固めてほしい」「できれば孫を抱きたい」という願いだけは、それほど仲のいい夫婦ではないのに奇妙に一致しています。

しかし夫のほうは子どもになんの働きかけもしません。カヨコさんのほうが思いつめて、深刻になっているのですが、夫はそれに対しても無関心なままです。

カウンセリングに来談したカヨコさんは、2人の独身の子どものことを思いつめ、私の前で泣き崩れました。いっしょに暮らしている34歳の娘と38歳の息子のことを

「かわいそうで……。ほんとにかわいそう」

「このまま結婚できなかったら、どんなにさみしい人生を送るのかと思うと……私が死んだあとに孤独な生活を送るに違いないんです、そんなあの子たちを思うと、死んでも死にきれません」

涙ながらにこう語ったのです。

これは極端な例かもしれませんが、似たような思いの還暦を過ぎた母親は、全国に大勢いるに違いありません。

不思議なのは、そんな母親たちに「そんなに結婚させたいのはなぜでしょうか、あなたは結婚してよかったと思っていますか」と尋ねると、ほぼ全員が「いいえ、結婚なんか正直しないほうがよかったですよ、そりゃ」と答えるのです。

にもかかわらず、子どもには結婚をさせたいと切望する彼女たちを駆動するのは、次の2つの考えでしょう。

結婚は人生最大の保険?

1つ目は、結婚は最大の保険であるという考えです。

社会保障が少しずつ充実してきたとはいえ、まだまだ日本社会は「家族」に多くを負わせることで支えられています。

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誕生から病、介護、そして葬儀にいたるまで、どれほど多くの制度が家族の支えを前提としていることでしょうか。

しかも、「家族の支え」といっても、これまではそのほとんどを女性が担ってきたのです。

育児や介護をする男性も増えてきてはいるものの、イクメンと呼ばれたり、介護経験が本になったりする程度でしかありません。

子どもを結婚させたいという女性たちは、そんな理不尽な過重負担を知りつつ、結婚なんかと思っていても、自分の子どもがそこから外れることは強く恐怖します。

なぜならそれ以外の道も、未婚のまま老いるという先例も知らず、家族の範型から逸脱する存在への風当たりの強さだけを知っているからです。

結婚して家族をつくることは、日本で生きていく上での最大の通行手形であり、もっと言えば、いざというときの最大の保険なのです。

寂しい人生を送る、そんなかわいそうなことはさせられない、というのは表向きの理由にすぎません。