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内閣支持率が3割を切っても、自民党で「安倍降ろし」が起きない理由

強さの構造を解き明かす

「青木率」でもまだ余裕がある

森友学園問題が沸騰してからはや1年。この問題は国有地の私企業に対する廉価売却という不透明な疑惑から、公文書改竄という新展開を迎え、加えて加計学園問題でも首相関与の疑惑が再燃した。最新のNNN世論調査によると内閣支持率は20%台の「危険水域」にはいった。

しかし政党支持率では、自民党は第二党である立憲民主党のそれを大きく引き離し、概ね30%~35%。「政党支持率と内閣支持率の和が50を下回るとその政権は退陣する」という「青木方程式(青木率)」に当てはめれば、第二次安倍政権は60近傍の準安全圏にある。自民党支持率を35%に固定すると、50を下回るためには内閣支持率は15%未満に低下しなければならない。要するにまだ余力を残している状態だ。

2009年の自民党下野選挙時(=鳩山由紀夫内閣誕生時)は、自民党と民主党(当時)の政党支持率は25%~30%程度で拮抗、追いつ抜かれつしていた。

現在の数字から言えば、自民党以外の野党による政権交代の状況にはほど遠い。自民党内での首班交代という意味においてのみ、安倍政権の状況は「黄色信号と赤信号の中間」といったところだ。

国会前では「安倍退陣」を求める激しいデモが行われているが、正直、2016年の朴槿恵政権退陣デモをソウル市で眼の当たりにした私にとっては、その参加人数も盛り上がりも韓国に比べれば小粒。殺気だった市民の声はあまり聞こえてこない。

相変わらずネット世論調査では安倍支持が80%以上という結果もあり、なにより「失言」であっという間に支持率が1割を切った森内閣(2000年~2001年)と比べれば、第二次安倍政権の盤石ぶりは目を見張るものがある。

 

様子見ムード

事実、本年秋に予定されている総裁選を前に、ポスト安倍を巡る有力候補をはじめ、自民党内では様子見ムードが目立つ。総裁選まで時間があるので何が起るか全く分からないが、目下即「安倍降ろし」という雰囲気はそこまで強く出ていない。

1980年代以降、5年以上続いた長期政権は3つしかない。(1)中曽根、(2)小泉、(3)第二次安倍である。

5年半続いた小泉純一郎内閣の場合、2005年の郵政選挙圧勝の後、総裁任期を特例で延長する構想があった。が、小泉が従前の宣言通り勇退を崩さず、ポスト小泉「麻垣康三」(麻生、谷垣、福田、安倍)とよばれる4名の総理総裁候補が出た。

このうち、谷垣を除いて全てが小泉以降、総理大臣になった。だが、目下支持率が低下するなか、小泉政権と同等の長期政権になった第二次安倍政権下で、「麻垣康三」に類する強力なポスト安倍候補は見当たらない。

石破茂氏は本年4月に予定していた総裁選出馬宣言を保留している。小泉進次郎氏は安倍批判を強めるが、去就を明らかにしていない。何より37歳にしていきなり首相の任を負うのは困難だろう。女性初の首相候補と目される野田聖子氏は地元岐阜県で女性政治塾を開校して総裁選出馬への布石を打っているが、明確な潮流になるまでには至っていない。様子見ムードばかりが漂っているのだ。

公文書の改竄はかつてないほど重大な問題である。一度決裁された公文書があとから幾らでも改竄できるとなると、国民は行政の行いを監視・検証出来なくなり、後世の歴史家は史料を元にした歴史研究が出来なくなる。

この問題は、「官僚が全て悪い」との結論になれば官を統治できない行政府のガバナンスの責任が問われるし、行政府が関与したとなると重大な犯罪行為を政治家が犯した事になる。

進むにせよ引くにせよ地獄が待っているとしか思えないわけだが、どうも自民党内の有力政治家は、岸田文雄氏を筆頭として、たとえ安倍晋三総理の出身派閥・清和会とは異なる派閥であっても、奥歯にものが挟まったような言い方に終始している。

これは、敵対派閥のあらを探し、すわ政局となれば他派閥攻撃に出て、「○○降ろし」などという政局になった70年代、80年代の自民党政治とは全く異なる様相を呈していると言える。

逆に言えばなぜ、第二次安倍政権は自民党内にあってもそこまで強い権勢を維持できるのか、なぜ安倍は強いのかという疑問を惹起する事になる。

結論から言えば、安倍政権は過去5回の国政選挙の全てで圧勝しているからである。