完璧だった「ハリルホジッチの采配」はなぜ代表選手に拒まれたのか

狙い通りの戦いもできていたのに
小宮 良之 プロフィール

今は前を向くしかない

昨年12月に行われた「E−1選手権」での乖離は、決定打になっている。

「つなぐな、とにかく蹴れ!」

ハリルホジッチはそう指令したという。相手の中国、北朝鮮、韓国は技術的に低いものの体格的に優れ、走力や高さに利点がある。日本の選手に、「自分たちの強さを捨て、弱さを拾い、土俵を下りて戦え」と命令したに等しい。そして一敗地にまみれた。今年3月の欧州遠征でも同じことが起きてしまった。

日本人の良さを引き出し、勝利に導くのが代表監督の仕事のはずだ。

 

もしハリルホジッチが協会の全面的サポートを受けていたら、監督を続けていただろう。彼が怒るのは当然。解任理由として、ハリルホジッチ自身が語っているように、「スポンサーや金」という政治的背景が引き金を引いた部分もあるかもしれない。

その点、協会の示した後任人事には、不安が残る。

西野朗氏は監督畑の人物で、技術委員長としては素人だった。そのことがサポートすべき監督を苛立たせ、解任のタイミングを遅らせ、この期に及んでの解任騒動につながっている。

打つ手なく、自らが監督になりかわったに過ぎない。その点、新技術委員長に就任した関塚隆氏も監督業の人。技術委員長としては素人同然である。同じことが繰り返されるのだろうか——。問題の所在は明らかだ。

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しかしその場凌ぎと言われようとも、今はワールドカップに向け、一枚岩になるしかない。

「ハリルホジッチの目論見が成功だったか、失敗だったか、それを検証する機会がなくなった」という意見がある。だが、ワールドカップにおける代表は勝てば官軍、負ければ賊軍。総括するために存在する大会ではない。

ハリルホジッチは被害者かもしれないが、彼自身も道を失っていた。今年3月の欧州遠征で、乾貴士(スペイン・エイバル)をメンバー外にするなど、要らぬ批判を煽った。好みの選手を選ぶ傾向が強く、クラブで結果を残している選手に対する序列は崩壊していた。

そうして四方を敵に回して挑んだ最近の試合内容は、最悪に近かった。いまは協会批判とハリルホジッチ擁護が一緒くたになっているが、解任されたことそのものには、それなりの理由があったことも事実なのだ。