完璧だった「ハリルホジッチの采配」はなぜ代表選手に拒まれたのか

狙い通りの戦いもできていたのに
小宮 良之 プロフィール

オーストラリア、サウジアラビア戦が頂点だった。昨年に入ると、ハリルJAPANは戦術的機能を失っている。

その理由としては、一つには戦術を実際に動かしていた主将・長谷部がケガで戦列を離れる機会が多く、合流しても完調には程遠かった点が挙げられるだろう。

長谷部はポジションを補完するセンスに優れ、彼の動きや指示によって選手同士の距離感や角度は適性に保たれていた。その不在によって守備の安定が致命的に崩れ、攻撃にパワーが使えなくなった。

 

また、指揮官は本田、香川、岡崎慎司のような主力選手と距離を置くようになっている。一方、井手口陽介、浅野拓磨、宇佐美貴史、杉本健勇などお気に入りの選手を登用。新しい血を入れようとした。

しかし抜擢した選手たちは、これまでの主力を越える働きを見せられなかった。

ハリルホジッチが提唱した戦い方は、完全に宙に浮いた。

予選も終盤はイラクに勝ちきれず、サウジアラビアに敗れた。その後も弱小ハイチに引き分け、ブラジル、ベルギーには子ども扱いされている。年末には韓国に、1−4と屈辱的な負け方をした。

選手がハリル流に拒否反応を見せるようになった。

「日本人らしさ」との葛藤

ハリルホジッチが気の毒だった一面はある。トップダウンのリーダーシップが受け入れられず、孤立した。言い換えれば、「提示した戦術を運用できる選手が乏しかった」とも言える。

しかしハリルホジッチは一国の代表監督として、「日本人らしさ」を引き出す手腕を欠いていた。

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日本人サッカー選手はコンタクトプレーが強くないし、戦術的柔軟性も低い。しかしおしなべて技術が高く(例えば両足で蹴れて)、敏捷性、持久力にも秀でる。それがポゼッションでアドバンテージになった。

また、追い込まれた状況での反発力も高い。06年W杯、2014年W杯も、敗退一歩手前でブラジル、コロンビアという強豪と相対したときも、貴重なゴールで一時にせよ肉迫している。士気の高揚によって、思いもよらぬ力を出すところがあるのだ。

ただ、ハリルホジッチは、日本人のそうした技術の追求や非論理的な団結や闘争心に、少しも評価を与えなかった。