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大谷翔平の「凄さ」とは結局何なのか。メジャーに精通するプロが解説

あえてフォークを決め球にするとは

いかに天才とはいえ、かくも鮮烈なメジャーデビューを飾るとは、いったい誰が予想できただろうか。大谷翔平があらためて見せつけたその「凄み」を、メジャーに精通するプロたちが分析する。

1ヵ月前とは別人

〈『和製ベーブ・ルース』オオタニは本家ルース以来の強打の投手になれる。スーパースターにふさわしいパワーとオーラがある〉(「スポーティングニュース」)
〈公式戦の初戦で、どれだけ変身したかを見れば、地上最高の選手になりたいという彼の志も理解できる〉(「ロサンゼルス・タイムズ」)

アメリカ現地時間1日、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平(23歳)の初登板を見届けた米メディアの報道は、賛辞で溢れかえった。

この試合、大谷はアスレチックスを相手に、6回3安打3失点。2点リードの2回に逆転3ランを浴びたものの、3回以降は、1本のヒットも許さなかった。

「正直に言って、3月半ばの段階ではもっと苦しむと思っていました。もう、ただただ凄いと言うほかありません」

こう語るのはメジャーリーグ解説者の武田一浩氏だ。

武田氏は、3月9日に大谷が先発したメキシカンリーグのチームとの練習試合の解説を担当したが、この日の大谷は、3回を6安打6失点3四死球と散々だった。

「あの時点ではメジャーのボールに相当手を焼いている様子でした。メジャー球は日本に比べて縫い目が高く、表面がツルツルしている。日本から向こうにいくと、たいてい苦しむものです。

さらに、エンゼルスのキャンプ地・アリゾナ州は非常に乾燥しているので、余計に滑りやすくなる。これはまともにコントロールできるようになるまで相当かかるとふんでいたのですが……」(武田氏)

だが、1日の投球では、5回まで毎回の6奪三振。最速161kmに達した速球で確実にカウントを稼ぎ、最後にフォークボールで仕留めるパターンが完成されていた。

 

わずか1ヵ月で、なぜ生まれ変わったかのように制球が安定したのか。この試合で解説を担当した元メジャーリーガーの薮田安彦氏は、試合中の大谷のしぐさに、その凄みを見た。

「試合序盤、スライダーが何球か抜ける場面があったのですが、そのたびに大谷は口元に右手を運んでペロッとなめたり、息を吹きかけて温めたりしていた。自分の指先の感覚をメジャー球にフィットさせる技を見出したのでしょう」

くわえて、'05年にアスレチックスの中継ぎとして活躍した藪恵壹氏は、大谷が、日本時代と投球の組み立てをガラリと変えてきたことに驚愕したという。

「あの直球が向こうでも通用するのは誰の目にも明らかだったので、あとはどんな変化球と組み合わせるかが課題だった。

メジャーではチェンジアップのような『打者の手元で動いて芯を外すボール』が主流のなかで、あえてフォークを決め球に持ってきた彼の嗅覚は、やはり一流です」