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シリア内戦は「アメリカの攻撃」でむしろ悪化したかもしれない

当事者の市民は置き去りにされたままだ

米英仏「シリア攻撃」の狙いと効果

2018年4月14日の現地時間未明、米英仏によるシリア領内への空爆が始まった。

米国は、同月7日にダマスカス郊外県東グータ地区ドゥーマにおいて、アサド政権が化学兵器を使用し多数の死傷者が出たと断定し、その対抗措置として軍事行動を実施したと説明した。

米国によるシリア「内戦」への直接介入は、1年前の4月7日の軍事行動に続き、2度目となる(参照「米軍がシリアをミサイル攻撃した意味〜中東混迷の転換点となるか」)。

今回は、投入戦力の規模も標的も拡大され、「化学兵器使用を許さない」という米国の断固たる姿勢をより強く示すことになった。

 

しかし、その一方で、攻勢に見える米国主導の今回の軍事行動も、その内実に目を向けてみれば、2011年からのシリア「内戦」への対応に苦慮する同国の姿が浮かび上がってくる。

トランプ大統領は、化学兵器が使用されたとされる4月7日の翌日の段階で、アサド政権とそれを支援するロシアとイランを名指しで非難し、「大きな代償」を払うことになると警告した。そして、11日には、いずれはミサイルによる攻撃を敢行すると宣言した。

だが、その「大きな代償」にアサド政権の打倒が含まれていないことが米英仏の政府筋からも語られるなど、今回の介入によってシリア「内戦」の趨勢を大きく変える意思がないことも明らかになっていた。

つまり、今回の軍事行動においても、理由はあくまでも化学兵器であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。

事実、化学兵器関連施設をターゲットとした空爆は第一波のみで直ちに「完了」とされ、その成否よりも行動それ自体が目的であったかのように見えた。

では、化学兵器使用を理由とした米国による今回の軍事行動には、どのような効果が想定されていたのだろうか。米国の狙いはどこにあったのだろうか。

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米国が抱える「ジレンマ」

シリア「内戦」における米国の関心は、「イスラーム国(IS)」をはじめとするイスラーム過激派の殲滅から、イランの勢力拡大の阻止へとシフトしている。

周知の通り、アサド政権は、ロシアとイラン(とレバノンのヒズブッラー)の支援によって、「内戦」に勝利しようとしている。

今では、ISはもとより反体制諸派も壊滅的な状況にあり、各地での戦闘もアサド政権側の一方的な攻勢が目立つようになっている。

こうした状況に対して、米国の姿勢は少々複雑である。ジレンマと言ってもよい。すなわち、ロシアに泥沼化した事態の収拾を委ね、アサド政権の存続を既定路線としていったんは「内戦」を終わらせていく。

しかし、ロシアに完全なフリーハンドを与えてしまうと、シリアにおける米国の影響力が減衰し、さらには、「仇敵」イランの勢力拡大を招きかねない。

つまり、米国は、少なくともシリア「内戦」の文脈において、ロシアの動きに対して肯定と否定の狭間で一貫した姿勢を打ち出しにくい状況に陥っているのである。