もう騙されない!医者が教える「トンデモ健康情報」の見抜き方 

注意すべき「因果関係」の罠
奥田 昌子 プロフィール

「原因と結果」のからくり

原因と結果の関係を因果関係といいますが、日常生活でも医学研究の世界でも、因果関係を間違って解釈してしまうことが少なくありません。

たとえば「日本でがんが増えている」というのもよくある間違いです。

Photo by iStock

日本は先進国のなかでも、がんによる死亡率が高いといわれています。これにはちゃんと理由があり、一つは日本の平均寿命が長く、高齢者が多いことです。がんは高齢になるほど発症しやすい病気なので、高齢化が進んでいる国は、がんによる死亡率が上がります。

そのため、ある病気で亡くなる人が増えたか減ったか調べたり、国ごとに比較したりするときは、データを単純にくらべるのではなく、特殊な計算式を使って集団の年齢をそろえて比較しています。これが、先に出てきた年齢調整死亡率です。

そしてもう一つ、がんによる死亡率が高いというのは、見かたを変えると、他の病気による死亡率が低いということです。

日本は国民全員が医療保険に加入しており、いつでも病院を受診できます。健康の大切さを理解している人が多く、健康診断と予防接種も普及しています。

かつて猛威をふるった感染症をはじめ、脳出血などのおそろしい病気で亡くなる人が大きく減ったことで、がんによる死亡が増えたように見えているのです。

実際に年齢をそろえて比較すると、日本ではほとんどのがんによる死亡率が下がってきているのがわかります。

 

コレステロール値は高いほうがよい?

原因と結果を逆にとらえてしまうこともあります。

この例がコレステロール値をめぐる誤解です。「コレステロール値はちょっと高いくらいのほうがよい」という人がいますね。これが本当なら常識がひっくり返ることになりますが、本当のところはどうなのでしょうか?

この話のもとになったのは、ある学会が数年前に行った発表でした。この学会は独自の調査にもとづいて、「悪玉コレステロール値が低いグループは死亡率が高い。とくに肺炎や、がんによる死亡が多い」と報告したのです。

やがて、話をふくらませて、「コレステロール値は少し高いくらいのほうが長生きできる」と主張する人まであらわれました。

しかし、これは、原因と結果の取り違えによる誤解と思われます。おそらくは、「もともと重い病気の人たちだった」から「コレステロール値が低かった」のです。

コレステロールは約70%が体内で合成されているため、がんや肝臓病などの重い病気や加齢により体が弱ると、コレステロールを作れなくなって数値が下がります。重い病気なのですから、こういう人たちは死亡率も高くなるはずです。

この調査が、重い病気で体力が落ちた人を含めて実施されていたとしたらどうでしょうか? この学会が「悪玉コレステロール値が低いグループは、とくに肺炎や、がんによる死亡が多い」と述べているのも、調査の参加者にこういう人たちが混じっていたことをうかがわせます。

コレステロール値が高くても長生きする人はいるでしょうが、「高めのほうが長生きする」ことを示す信頼できるデータはありません。

その逆に、コレステロール値が高いと動脈硬化を原因とする心臓病の発症率が上がることは、多数の厳密な研究から、ほぼ間違いないとされています。研究の過程では、専門家でさえ間違えることがあるのです。