麻原彰晃の魂は「転生」して生き残るのか

「神秘」が再び蔓延する社会で
島田 裕巳 プロフィール

日本社会は転生を受け入れるか

では、どこに転生するのか。

オウム真理教の信者は修行者であり、出家である。ところが、その上に立つ麻原は在家であり、結婚もし、子どももいる。そのあり方は、現在の日本仏教の僧侶一般と共通する。

これは、チベット仏教からすれば考えられないことだが、麻原の魂は、彼の子ども、とくに長男に転生していく可能性が高い。信者たちも、どうやらそれを期待しているようだ。

麻原は逮捕されて以来、東京拘置所の塀のなかに居て、信者たちは連絡をとることもできない。裁判においてさえ、最後には無言を貫くようになった。

 

ところが、麻原の魂が、彼の長男に転生すれば、そこに新たな教祖、新たなグルが生まれる。これは、宗教教団にとっては、その活動を活性化させる上で極めて重要である。

しかも、時代の流れは、かなり変化してきている。スピリチュアルなものに対する関心はふたたび高まり、そうした事柄を許容する空気が生まれている。つまり、転生ということを受け入れる状況が生まれているのである。

宗教の興亡は、かなり時間を要する事柄である。イエス・キリストが十字架に架けられて殺されてからキリスト教がローマ帝国の国教となるまでには300年以上の歳月が必要だった。

麻原に対する死刑執行は、オウム真理教が引き起こした事件に対する決着であるとともに、それが新たなはじまりになる可能性、あるいは危険性を秘めている。

現在の残存教団がそのまま拡大し、社会的な影響力を増していくことはないかもしれない。

だが、キリスト教におけるパウロ(生前のイエス・キリストに会ったことはなかったものの、キリスト教の宣教師となった)のような人物が教団の外側に現れたとしたら、事態は変化していくかもしれないのである。