働かせるが定住はダメ…政府が「技能実習の延長版」創設へと動く狙い

労働力不足への焦りが国を歪ませる
望月 優大 プロフィール

加えて見逃せないのが、5年プラス5年の在留によって永住権申請の要件の一つ「引き続き10年以上の在留」をクリアしてしまわないよう、「技能実習終了後に一定期間母国へと帰還すること」を在留資格付与の要件とするという点だ。

これが意味しているのは、技能実習生が労働可能な期間を倍に引き延ばすことで、安価に確保可能な労働力を倍増させつつ、日本での「定住」やそれにつながる「家族の呼び寄せ」などは許したくないというこの国の姿勢である。

単身の労働者を一定期間、最長10年に渡って低賃金で働かせ、その期間を終えたら来日時と同じく単身のまま母国に帰ってもらう。そして、入れ替わりに新しい単身労働者を入れていく。

家族やコミュニティの大切さ、孤立や無縁社会の厳しさが盛んに訴えられる現代において、時代錯誤的に「単身で・いつか帰る・外国人労働力」のあり方に固執する。こういうビジョンが根底にある。

 

より”都合の良い”技能実習資格

前触れはあった。

今年2月に「外国人労働者の就労拡大」について政府の経済財政諮問会議で首相から検討開始の指示が出されていたのだ。

2月の段階では「『専門的・技術的分野』の在留資格に関して対象の拡大を目指す」とされていた。

この「専門的・技術的分野の在留資格」というのが、先の4番目の在留資格で、この資格を持っているものは家族呼び寄せが可能、かつ永住に関する優遇の対象にもなる。技能実習に比べてはるかに自由度が大きい。

しかし、2月の同じ報道には、同時に「国籍取得を前提とする『移民』につながらないよう、在留期間を制限し、家族の帯同も基本的に認めない」という記述もあった。

ここには明らかな矛盾があることにお気づきだろうか。

つまり、「専門的・技術的分野の在留資格」を対象拡大・要件緩和すると言いながら、在留期間は制限するし家族帯同も認めないということも同時に言っていたのだ。

「専門的・技術的分野の在留資格」では在留期間の更新も可能だし、家族の呼び寄せも可能である。それを不可能にすると言っているわけだから、大きな矛盾をはらまざるを得ない。

今回報じられた「特定技能」というアイデアは、この2月時点での矛盾に対する一つの答えになっているのではないか。

つまり、労働力不足を解決するために、「専門的・技術的分野の在留資格」を対象拡大・要件緩和するのではなく、より”都合の良い”(=在留期間が制限可能かつ家族帯同なし)技能実習資格での滞在可能期間を実質的に倍増する、こういうアイデアへと思考が転換していったのではないか。外形的にはそのように見える。