「ピロリ菌=悪玉菌」は証明されたか?いま本当に分かっていること

「除菌」は必要に応じて行うべきだ
美馬 達哉 プロフィール

昔からあったピロリ菌論争

ピロリ菌に戻ろう。

ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」という細菌で、らせんの形をしている(だから、羽を回転させて飛ぶ「ヘリコ」プターと同じような名前)。

人間の胃の粘膜に棲んでおり、19世紀から顕微鏡では見つかっていたが、うまく胃から生きたまま取り出せなかった。

そして胃酸で強酸性の胃の中では細菌は死滅すると信じられていたため、胃の中の細菌は死骸だと思われていた。

1983年になって初めて、オーストラリアのロビン・ウォレン博士とバリー・マーシャル博士が人の胃から生きたピロリ菌を取り出して培養することに成功して論文にした。

ピロリ菌が、ただ胃の中にいるだけか、何か病気を引き起こす有害な細菌かについては当時も論争があった。人間の消化器の中には多くの細菌がいるが、そのすべてが病原菌ではないからだ。

 

ピロリ「悪玉の証明」

ピロリ菌が胃潰瘍の原因に違いないと考えたマーシャル博士は、1984年に自分でピロリ菌を飲む大胆な行動に打って出た。その結果、彼は急性の胃炎と消化不良を患ったという。

ただし、この胃炎は数日で治療なしに回復し、胃潰瘍にはならなかった。勇気ある自己実験にもかかわらず残念ながら不完全燃焼というべきか、彼の健康にとっては幸運というべきか、迷うところだ。

だが、この実験結果をきっかけに、ピロリ菌悪玉説は広がり、カミカゼ自己実験ではなく大規模な研究の結果、胃潰瘍の(再発)予防にはピロリ菌の除去が有効とわかっている。

2005年、ウォレン博士とマーシャル博士はこの業績でノーベル医学生理学賞を受賞した。

胃がんとピロリ菌についても研究が進み、1994年には世界保健機関WHOが、ピロリ菌を胃がんに対する発がん性ありと認定している。

ということで、ピロリ菌は悪玉菌で確定とも見える。

だが、人間のマイクロバイオームは複雑で、ピロリ菌だけをやっつけようとするといろいろ不都合が起きる可能性もある。