金正恩は、こうして北朝鮮の若者に「忠誠心」を叩き込んでいる

本当は核開発なんて、したくないのに
鴨下 ひろみ プロフィール

雨の中、涙を流し「金正恩万歳」

若者の間で金正恩への個人崇拝が急速に進んでいるのを実感したのは、同じ朝鮮労働党創建70周年の松明行進の取材だった。

平壌周辺の学生ら1万人以上が参加し、トーチを手に金日成広場で壮大なマスゲームを繰り広げた。

 

開始直前、大粒の雨が降り出し、開始が30分遅れた。メディアや観客らが近くの建物の屋根の下で雨宿りしている間、学生らは外に立ったまま。気温が急速に下がり、吐く息が白くなるほど冷え込んでいたが、学生らは白いシャツ一枚の制服姿で耐えるしかない。

♪行こう、行こう、白頭山へ行こう。

♪我々を呼ぶ、白頭山へ行こう

どこからともなく歌声が聞こえてきた。学生らが雨に濡れながら、金正恩を讃える歌を歌い、士気を鼓舞していたのだ。

20時半に雨がやみ、ようやく行事が始まった。その時まで学生らの歌は絶えることなく続いていた。

両手にトーチを持ち、「金正恩同志万歳、朝鮮労働党万歳」と大声で叫びながら行進する学生たち。その後も「青年前衛、青年英雄」「金正恩、決死擁護」などのスローガンを叫びながら、人の波がうねるように広場を埋め尽くしていく。

ひな壇に金正恩と、来賓の劉雲山・中国共産党常務委員(当時)が登場すると、マンセーの合唱が沸き起こった。

途中、再び雨が激しくなったが、行事は継続。学生らはびしょ濡れになりながら走り回る。クライマックスに近づくにつれ、熱狂が高まり何人もの学生が涙を流しながら飛び跳ね、金正恩万歳を叫んでいる。異様な興奮と陶酔に我を忘れているように見えた。

北朝鮮では宣伝扇動で人心をコントロールし、巧みに体制を維持し続けてきた。金正恩も同様の手法を取っているが、若者をターゲットに思想教育を強化しているのが特徴だ。

若い世代に金正恩への忠誠心を徹底的に植え付けながら、世代交代を進める。「青年重視」は金正恩体制の長期化をめざす布石なのだ。