金正恩は、こうして北朝鮮の若者に「忠誠心」を叩き込んでいる

本当は核開発なんて、したくないのに
鴨下 ひろみ プロフィール

「青年重視」というデマゴーグ

白頭山英雄青年突撃隊。

金正恩から英雄と讃えられる若者たちがいる。

彼らは、北朝鮮最北端の両江道で水力発電所の建設に従事し、13年越しの工事を完成させた。

02年から始まった建設は、零下30度に冷え込む酷寒の気候と厚い岩盤などの地理的条件に阻まれ、難航に難航を重ねてきた。金正恩は15年10月10日の朝鮮労働党創建70周年までに、建設を完成させるよう檄を飛ばし、全国から建設志願者を募った。

若者の愛国心と忠誠心に訴えた結果、大学生、軍人、青年団体などから多くの若者が建設に参加。過酷な条件の下で想像を絶する“速度戦”が展開され、記念日の1週間前に竣工式の開催にこぎつけた。

 

「厳寒に運搬手段まで凍りつくと各種のそりで輸送路を切り開いた突撃隊員たち、西頭水(両江道を流れる川)の身を切るような冷たい水の中に飛び込み、全身が『氷柱』となってレールを支えた決死隊員たちをはじめ、発電所建設のためにささげた青年たちの革命性と犠牲的精神、愛国心を前にしては誰しも頭が下がるでしょう」

「わたしは、青年突撃隊員たちの誇らかな闘争ぶりを見て涙が出るほどみなさんのことをありがたく思い、みなさん一人ひとりをあの空まで抱き上げてやりたい気持ちを抑えることができませんでした」

金正恩は突撃隊員を絶賛し、完成した発電所を「白頭山英雄青年発電所」と命名した。

白頭山英雄青年発電所は16年までに3号発電所が完成したとされる。

三つの発電所で合計10万キロワットの出力を想定し、周辺地区の電力不足解消をめざしたが期待通りの成果は出ていない。いずれの発電所も完成直後から漏水やダム壁の崩壊、発電機能の低下などの欠陥が相次いで露呈した。鳴り物入りで完成を披露したものの、まともに稼働していないのが実情だ。

そもそも建設知識のない若者を大挙動員して、短期間に無理して完成させたわけだから、手抜き工事が横行してもおかしくない。大衆動員と速度戦による建設の弊害が一気に噴き出した形だ。

韓国の国情院は15年11月、金正恩の最側近、崔竜海が地方の共同農場に送られ、革命化教育と呼ばれる思想教育を受けさせられているとの見方を示した。

白頭山発電所で土砂崩れが起き、漏水が発生した責任を問われたという。電力不足解消にはほど遠い結果だが、これ以降も、金正恩は「青年重視」の宣伝扇動活動を大々的に展開し、若者の忠誠心や愛国心を煽って建設現場などへの動員を繰り返している。