物理の授業でミサイル登場…北朝鮮「エリート中学生」驚きの教育内容

インターネットは知らないけれど
鴨下 ひろみ プロフィール

「フェイスブック…?」

北朝鮮の物理の教科書を見てみよう。

表紙には北朝鮮のミサイルと衛星が描かれている。さらに、核や宇宙開発、情報技術開発の全ての基礎として、物理学の重要性が強調されていた。

「ロケットの運動」と題された章には、「北朝鮮は他国とは違う朝鮮式のミサイルを開発すべきだ」という金正日の言葉を引用し、特別に1章を割いて、ミサイル発射の基本原理などを詳しく紹介している。また、情報技術という科目があり、中学生からコンピューターの基礎を学ぶなどIT教育にも力を入れているのがわかる。

学生たちは1日6時間授業を受けた後、教科書やコンピューターなどを利用して自習するという。北朝鮮が誇るエリート学生だけに、入学後も勉強漬けの毎日が続くようだ。

一方、英語の教室では……。

先生「He could contact to me, make sense?」

生徒「Yeah」

北朝鮮に対し敵視政策を取っているとアメリカを常に批判している北朝鮮だが、この学校では積極的に英語教育に取り組んでいる。

生徒にインターネットやフェイスブックを知っているか聞いてみると……。

──インターネット使っている?

「インターネット……?」

──フェイスブックは?

「フェイスブック……?」

北朝鮮でもインターネットは利用されている。だが、非常に制限された形での運用だ。

 

北朝鮮では外部のサイトに自由にアクセスすることは許されず、通常は北朝鮮の中だけで運用されるサイトしか見られない。インターネットという用語は使わずに、「網」と呼ぶ。ネットを意味する中国語をそのまま朝鮮語にして使っているようだ。

IT技術の多くが中国から入ってきたことを窺わせる一例だ。

学生が使う、学習用のインターネットは通常「学校網」と呼ばれている。生徒たちはインターネットという用語も知らないし、フェイスブックの存在など想像もできない。怪訝そうな受け答えになってしまうのも無理はない。

コンピューターの教科書で、学校網に接続する方法を見てみよう。

まずIPアドレスを設置。北朝鮮のWEB閲覧サイト「ネナラ(私の国)」から学校のホームページを開き、IDを入力して閲覧の許可を得る。国家のコンピューター網に接続する平壌星と呼ばれるサイトもあるが、こちらもいちいち閲覧の許可を得てからサイトに入る仕組みになっている。

あくまで北朝鮮内部だけで使用するLANのような形で運用されており、Yahoo!やグーグルなど海外のポータルサイトにはつながらない。そうした外部のネットを利用できるのは、幹部や技術者などごく一部の人だけで、厳しく情報統制されている。

つまり北朝鮮版のWEB閲覧サイトはあっても、そこから海外のサイトには接続できない。

以前、グーグルの会長が北朝鮮を訪問した際には、北朝鮮がインターネットを開放するのではないかと注目されたが、結局、実現しなかった。インターネットをオープンにしたら、金正恩体制を批判する情報が大量に流入し、体制を脅かす恐れがあるからだ。

IT教育を強化し物理や化学教育を重視する北朝鮮だが、制裁の影響で先端技術の取得は困難になる一方だ。世界レベルの科学強国をめざすという金正恩の夢の前には大きな壁が立ちはだかっている。