平壌一中の授業風景。北朝鮮全土から集められた優秀な生徒が学ぶ(写真:フジテレビ)

物理の授業でミサイル登場…北朝鮮「エリート中学生」驚きの教育内容

インターネットは知らないけれど

各国からの厳しい経済制裁を受け、疲弊しているという北朝鮮の国情。ニュースではどうしても金正恩・朝鮮労働党委員長の動向ばかり報じられるが、北朝鮮の「庶民」はいったいどう暮らしているのかーー。

フジテレビで北朝鮮の現地取材に長年携わってきた鴨下ひろみ氏は、新著『テレビに映らない北朝鮮』で、知られざる北朝鮮国民の暮らしを克明にレポートしている。かの国の子供たちが、学校で教わる「驚愕の内容」とは?

 

徹底した「指導者崇拝」

金正恩が打ち出した「核開発と経済の並進路線」というスローガン。核兵器の能力を向上させるとともに、経済建設にも力を入れるという、我々にとっては何とも迷惑な方針だが、金正恩の号令の下、北朝鮮は本気でこの道を追求している。

これらの国家目標を支えるのが、北朝鮮のエリートだ。

まずは北朝鮮の教育制度を見てみよう。北朝鮮にも義務教育制度があり、幼稚園1年、小学校5年、中学校6年の12年制となっている。北朝鮮の中学は、日本の中学・高校にあたるわけだ。

この間に徹底した指導者崇拝教育が実施される。幼稚園から始まって幼少時から繰り返し、金日成や金正日を神格化するエピソードや業績を教え込まれる。また、社会主義道徳など北朝鮮独特の科目もあり、世界に羨むものはないという北朝鮮優位の価値観を植え付けている。

金正恩の神格化も加速している。

我々が2015年に入手した北朝鮮の小学2年生の国語の教科書には金正恩のこんなエピソードが掲載されていた。

「フニの図画工作帳」

少年フニの新しい家を訪れた金正恩がフニに絵の描き方を教えたという題目だ。

──敬愛する元帥様はフニの傍らでここに花を描いたらいい、色は何色がいい、と一つ一つ教えてくださいました。フニは「敬愛する元帥様! 元帥様が教えてくださったとおりにきっと素晴らしい絵を完成させます」と誓いました──。

この時、金正恩が訪問したのは、12年に完成した平壌の倉田通りの超高層住宅。我々が翌年夏に取材したのと全く同じ住宅だった。

道徳の教科書での金正恩の姿

倉田通りは平壌の高層マンション建築ラッシュの先駆けとなった場所だ。マンションの入り口には金正恩の指導で建てられた住宅であることを示す看板が掲げられ、「金正恩同志が指導した建物」と書かれている。

当時、我々が取材した労働者の家庭が、教科書にも紹介された「フニ」の家だった。

フニ宅のリビングには金正恩から贈られたというソファや液晶テレビが置かれ、壁には金日成・金正日の肖像画が飾られていた。中でも一番の目玉は金正恩が夫妻で訪問した際、家族と一緒に撮った記念写真と、直筆の手紙だ。

フニの父親は金正恩夫妻の訪問を、全く予想していなかったと語った。

「家族4人と親戚で5部屋の家に住んでいる。ある時、家に突然、金正恩元帥様が視察に来られた。びっくりしたが子供にも声をかけて話をしてくれた。ありがたいことだ」

子供部屋には教科書に出てきたとおり、金正恩がフニに教えた絵が描かれたスケッチブックもあった。フニに聞くと……。

「(李雪主夫人が持ってきた)ギョウザが美味しかった」

「僕の家は(友達の家と比べても)一番いいよ」

フニの父親は平壌市で清掃関係の仕事につく、ごく普通の労働者だという。高層住宅の建設は金正恩時代の豊かさの象徴であり、だからこそ教科書にも採用され、宣伝されているのだ。

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今度は小学3年生の国語教科書をみてみよう。

冒頭に「我が党と国では愛する少年団員は金貨よりも大事な宝であり、希望と未来の全てです」という金正恩の言葉が紹介されている。

また、「愛の翼」と題する章には、全校17人しかいない山奥の小さい学校から少年団行事の代表に選ばれたチョル・ヒョクが、金正恩の配慮で特別機に乗り、遥か遠くの平壌を訪問できて大感激するエピソードが掲載されている。

13年頃から次第に、金正恩の人民に対する愛情を強調する記述が教科書に増えてきた。金日成、金正日の偶像化教育に加えて、正恩への個人崇拝が教育の分野でも急速に進んでいるのがわかる。

道徳の教科書には次のように書かれている。

「敬愛する金正恩元帥様は我々青少年たちを一番愛し、暖かく懐中で見る慈愛に満ちた父親です」

「金正恩元帥様に高く仕えることはその懐中で育った我々の一番の道理で、崇高な道徳です」