「本を造る工程」を知りたくて、印刷所の仕事人に密着し分かったこと

身近なのに、知らないことばかり
安藤 祐介

「なぜ印刷会社に入ろうと思ったんですか」

お二人とも、本が好きな点で共通していました。更に掘り下げると、田島さんは「メーカーで働きたかったんです」と答えました。ものづくりに対する気負いなどは無く、とても自然な、さりげない口調でした。一方、私はその言葉を新鮮な気持ちで受け止めました。

物語が魂ならば、本という身体を授けて世に送り出す仕事。そうか、本を造る仕事、すなわちメーカーなのだと。

ふじみ野市の工場では見上げるほど大きな印刷機が立ち並び、パレットに高く積まれた紙は、まるで柱のように見えました。場内を見学しながら伺った話の中で、登場人物に語ってもらいたい言葉がたくさんありました。

「紙は呼吸している」「営業の役目は印刷機の稼働率を上げること」「刊行日に間に合わせる」「編集者さんに『仕方ない』と言われるのが一番辛い」。取材初日から『とよ物語』は動き始めていました。

暁印刷、製本会社・国宝社でも本が完成するまでの工程を案内していただきました。私はこの日のことを一生忘れないと思います。とても書ききれないので、詳しくは本編に譲ります。

 

この日以来、約3年間にわたって私は『とよ物語』という仮題のまま原稿を書き進めました。何度か豊国印刷の本社にお邪魔し、色々な部署の方からお話を伺いました。多くの方に育てられた『とよ物語』。一人で書いている気がしませんでした。

取材の度にこれほど多くの人の真摯な仕事によって本は造られているのだと知り、心励まされました。皆さん、日々の仕事として取り組まれているので、真摯に向き合うのは当然と仰るかもしれません。感謝するのはお門違いかもしれません。

それでも私は今後、印刷・製本会社の方々に感謝しながら、物語を書くという本造りの初期工程に精一杯取り組もうと思います。

書き進めていくうちに、映画やドラマにはエンドロールがあるのに、本にはなぜ無いのだろうと思い至りました。『とよ物語』改め『本のエンドロール』は、本を造る仕事に奮闘する人々の物語です。

ご一読の上は、本編が終わってもすぐに本を閉じることなく、最後のページまでお目通しいただければ幸いです。

読書人の雑誌「本」2018年4月号より

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