なぜ親による子どもの虐待死の量刑は、かくも軽いのか

推協賞受賞作家の「怒り」と「願い」
吉田 大助, 薬丸 岳 プロフィール

親による虐待判決が強盗より軽い

日本の司法の軽すぎる量刑について、作家はもうひとつの例を挙げた。親による子への虐待だ。

『悪党』という作品の中の短編のひとつとして、母親による育児放棄を題材にしましたが、その2年ほど後の2010年に大阪で小説に酷似した悲惨な事件が起きました。この事件では母親の育児放棄により3歳の女児と、1歳9ヶ月の男児の命が奪われました。母親は懲役30年の実刑判決を受けましたが、例外的なんです。虐待で赤ちゃんが亡くなった事件は通常、せいぜい10年。

 

是枝裕和監督の『誰も知らない』という映画がありますが、そのモデルになった88年の巣鴨子供置き去り事件は、母親に執行猶予が付いています。懲役3年、執行猶予4年で、実刑にすらならなかった。こちらは不慮の事故という面もありますし、残された子供の元へ母親を返してあげよう、という情状酌量が働いたのかもしれません。

知り合いの飲み屋のマスターが、帰宅途中に強盗に襲われて殴られてお金を取られて、3日くらい入院したんですが、加害者は確か懲役3年でした。でも、求刑は6年でしたよ。親から子への虐待、傷害致死事件っておしなべて量刑が軽い印象があるんです。“どうしてなんだ!?”って思いますよね。

このところ多いのは内縁の夫が暴行して、子供を死なせてしまったケースです。その場合、男は懲役7年前後で、母親は執行猶予が付くかもしれません。母親も同情すべきところがまったくないわけではないけれど、母親も同罪だろうと僕なんかは思ってしまうんですよ」

是枝裕一監督による映画『誰も知らない』。主演の柳楽優弥のカンヌ映画祭主演男優賞をはじめ、世界各国で多くの賞を受賞した Photo by Getty images

子が親を殺す、俗にいう「親殺し」は、昭和後半まで通常の殺人罪よりも量刑が重かった。その後是正されたが、「子殺し」に関しては未だに、旧来の陋習が残っているのかもしれない。通常の殺人よりも、量刑が軽い印象は拭えない。

「親と子の犯罪に関しては日本の独特な考えがあるんじゃないか、という気がします。例えば“無理心中”という概念は、外国にあるんでしょうか? 少なくともアメリカではない、という話を聞きました。老々介護で悩んだ末にというものなど、気の毒に思わざるをえない心中事件も世の中にはあります。しかし、無理心中という情緒的な言葉に変換せず、殺人という言葉を使うべきではないでしょうか」