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アマゾンと激突必至のゾゾタウンが企む「2つの革命」

巨人にテクノロジーで食らいつく
既報の通り、今年アマゾンは日本のファッション界に本格参入していく。「ゾゾタウン」を運営する国内アパレルECの雄、スタートトゥデイとの激突は必至だ。2018年アパレル大戦争の幕開けを『アマゾンが描く2022年の世界』の著者、田中道昭氏が読み解く。

*本連載の目次
(1)ジェフ・ベゾスの次の野望は「アマゾン・カー」の実現だった
(2)ユニクロ、ゾゾを狙い撃つ「アマゾン・ファッション」の驚異的な戦術
(3)アマゾンと激突必至のゾゾタウンが企む「2つの革命」
(4)あらゆるものを資産化する「メルカリ経済圏」のポテンシャル

ファッション界を左右する2つのキーワード

ECファッションサイト「ゾゾタウン」を運営する「スタートトゥデイ」の前澤友作社長は3月25日、ツイッターでこう語りかけた。

筆者が注目しているのは彼の発言の内容だけではない。彼の言葉から現れるコミュニケーションスタイルである。SNSでの発信としては当然のことかもしれないが、社員や取引先はもとより、顧客に対しても実に親密に語りかけるのが前澤流だ。

スタートトゥデイの顧客をつなぐコンセプトは「友達」である。今年2月に発表された同社のサービスには「顧客は友達」という意味合いが色濃く表れた。それはこれからの日本のファッション業界の流れを決定づけた可能性がある。

 

いま日本のファッション界をけん引しているのは、スタートトゥデイである。さらに今年、この業界にEC界のガリバー、アマゾンが加わった。2018年日本のファッション界で起るのは、アマゾンとスタートトゥデイの激突だ。今回は「アマゾン・ファッション」と「ゾゾタウン」のEC戦略からファッション界のこれからを予測していこう。

前回、説明したように、アマゾン・ファッションの特徴はベーシックカジュアルを基本としてプライベートブランド(PB)や既存ブランドを展開する「ユニクロ×ZARA」の融合、そしてシューズや雑貨からジュエリーまでをも展開するファッションのトータルコーディネートである。

彼らの戦略を支えているのは、過去から未来にかけて収集を続ける膨大な取引情報や顧客情報を駆使した「ビッグデータ×AI」である。

筆者は、アマゾンの強みはマーケティング戦術の「4P」に加え、

(1)Product(商品)、(2)Price(価格)、(3)Place(流通チャネル)、(4)Promotion(プロモーション)

以下の「4C」を追及していることだと指摘した。

1)Customer Value(顧客の価値)、(2)Cost(顧客にかかる取引コスト)、(3)Convenience(顧客の利便性)、(4)Communication(顧客との対話)

それを他の企業を圧倒する形で可能にしているのが彼らの「ビッグデータ×AI」による分析力である。これからの小売業を考えるうえで「ビッグデータ×AI」は重要なキーワードなのだ。

さらにもう一つ重要なキーワードは「サブスクリプション」である。これは後で詳しく説明するが、この2つの重要なキーワードの本質を理解し、日本で競合に先駆けて事業展開しようと目論んでいるファッション企業がスタートトゥデイである。

今後の日本のファッション界の覇権はこのキーワードから生み出されるサービスで、その優劣が争われることになると予想されるのである。

迎え撃つ実力は十分

スタートトゥデイは、07年の上場以来、10期連続の増収増益を続け、18年3月期も第3四半期を終えた時点で売上高は前年同期比32%増、経常利益は21%増とファッション界の中で群を抜いた快進撃を続けている。

社長の前澤友作氏は41歳。「ネット通販では試着が出来ないので、絶対に成功しない」という定説を覆し「ゾゾタウン」を躍進させた。昨年、ニューヨークのサザビーズのオークションで、ジャン・ミシェル・バスキアの作品を約124億円で落札。いまや世界中に知られる現代アートのコレクターでもある。彼の生き方にはニュースを聞くたびにワクワクさせられる。

同社は昨年8月には時価総額1兆円越えを達成。しかしアマゾンの本格的なファッション進出を前にマーケットは神経質な視線を送っており、直近の株価は低迷している。マーケットは前澤社長の今後の行動を注視していると言っていいだろう。

マーケットには同社への迷いが現れているが、その実力や株式価値は高く評価されるべきであると筆者は考えている。ECサイトで成長を続けて来ただけに、もちろん物流拠点と撮影スタジオの運営に強みがある同社は、アマゾンの品川スタジオから繰り出される攻勢にも、渡り合っていける実力を備えている。

また昨年から始めた低価格帯のTシャツとデニムのPBの位置づけを、同社は利益率を高めていくためだと考えている。上場企業として低価格帯のPBで利益を出せる構造をつくろうとする前澤社長の現実を見据えた経営感覚も、筆者がスタートトゥデイを高く評価するポイントだ。甘えはないのである。