サラリーマンの体力が「30代に入ってガタッと低下する」医学的理由

ちゃんと説明できるんです
梶本 修身 プロフィール

では、「加齢によって自律神経のパワーが衰える」というのは、具体的にはどのような事態を指すのでしょうか。

前回もご説明したように、自律神経とは、体温・脈拍・呼吸・睡眠・身体の動きなど、人体に必須の機能を調節する神経です。私たちが気温などの外界の変化に対応できたり、激しい運動をしても急に気を失ったりしないのは、この自律神経が100分の1秒単位でさまざまな器官を調整してくれているからですが、歳をとるとこの機能が低下してくるわけです。

普通の高齢者がいきなり全力で走ると、すぐに呼吸が乱れ、心拍は追いつかなくなり、最悪の場合、心筋梗塞を起こして倒れてしまうでしょう。血圧は一気に上昇し、脳の血管などが破れて出血する恐れもあります。

そもそも、なぜ高齢者がこのような事態に陥ってしまうかというと、自律神経の機能が低下しているためです。冬の早朝や風呂場で亡くなるお年寄りが多いのも、急な運動で心筋梗塞を起こしてしまうのも、根本的には自律神経の衰えが原因なのです。

 

30代でピーク時の半分って…

先ほど「60歳時点の自律神経の機能は、20代のときの3割以下」と述べましたが、もちろん、ある日を境にして突然大きくダウンするわけではありません。

驚くべきことに、実は30代の時点で、20代と比べると、自律神経の機能はピークの半分程度まで衰えてしまいます。筋力はそれほど低下しないことを考えれば、20代から30代の自律神経には、きわめて劇的な変化が起きていると言えるでしょう。

30代半ばで引退するアスリートが多いのも、このためです。とりわけサッカーのように、全力疾走の時間が長く、ダッシュとストップを延々と繰り返すスポーツは自律神経に負担がかかるため、ほとんどの選手が30代のうちに引退を決めています。

今年1月に32歳で引退を決めた、元サッカー日本代表の平山相太氏(Photo by gettyimages)

では、私たち一般のビジネスパーソンの場合、自律神経の衰えはどのような現象として現れるのでしょうか。

今までは平気でこなせていた仕事なのに、ある時からなんとなく疲れるようになってきた。駅の階段で、少し息が切れるようになった。しっかり眠っても、なかなか疲れが取れなくなったーー。

こうした症状は、いずれも自律神経の能力が低下していることに原因があります。よく自虐的に「30歳を過ぎてから、急に身体の無理が利かなくなった」と言うサラリーマンがいますが、これは気のせいではなく、実は医学的な裏付けがあるのです。

とはいえ、「疲れやすくなってきたから、仕事はほどほどにしよう」というわけにもいきません。むしろ30代以降、ビジネスパーソンは忙しくなるばかり。次回は、こうした衰えを食い止めるための工夫についてご説明しましょう。

(つづく)