習近平の人事から読み解く、米中経済戦争の「落としどころ」

人のつながり、から見えてくるもの
加谷 珪一 プロフィール

中国の経済政策はより強権的に

では、習氏は具体的にどのような経済政策を考えているのだろうか。王氏、劉氏ともに経済政策のエキスパートであり、米国内にも豊富な人脈を持つ。一見すると、従来のオープンな経済政策が継承されるように思えるが、そうではないとの見方も浮上している。ヒントになるのは習氏が負った文革時代の心の傷である。

先にも述べたように、習氏の父親は文革時代、ひどい迫害を受け、習氏も党幹部の子息としては過酷な青年時代を送った。当時、下放されていた幹部子弟の多くは、党に見切りを付け国営企業を目指す人も多かったといわれる。だが習氏はこうした誘いを断り、党での昇進を望み続けたという。

 

習氏は極めて政治的な人物であり、毛沢東氏に対して複雑な感情を持つといわれる。習氏による一連の粛正工作は、中国国内ではよく文革にたとえられるが、習氏は毛氏を超える独裁者になることでリベンジを果たそうとしていると多くの中国人は考えている。

そうだとすれば、習氏が最終的に目指すのはオープンな中国経済ではないだろう。どちらかといえば暗く内向きで、周辺地域に対しては強権的に振る舞う「明王朝」時代のイメージである。トランプ政権が誕生し、米国までもが内向きになっていることは、習氏にとってむしろ有利に働く。

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駆け引きが大好きなトランプ氏は、関税など個別交渉の勝ち負けにしか興味を示さない可能性が高い。中国が大胆な譲歩案を示せば、すんなりと交渉が妥結することも十分にあり得るだろう。

これまでの米国のように、中国に対してグローバル化や民主化といった洗練された振る舞いを求めないのであれば、中国は米国の干渉を気にすることなく、アジア地域の「お山の大将」として君臨できる。

米国に対しては大幅に譲歩し、札束で通商問題を解決しつつ、アジア地域ではより強権的に振る舞う。2期目の習政権からはこうしたシナリオが見え隠れするが、そうだとすると日本にとっては厳しい状況となる。

トヨタを含め、自動車メーカー各社は、今後の成長をすべて中国市場に託している。だが、アジアの覇者となった中国は、かつての米国のようには振る舞ってくれないだろう。中国でビジネスをするためには、それなりの対価が要求されることになるかもしれない。

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