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習近平の人事から読み解く、米中経済戦争の「落としどころ」

人のつながり、から見えてくるもの

昨年10月の中国共産党大会に続き、今年の3月に全人代(全国人民代表大会)が開催されたことで、習近平政権の2期目が本格的にスタートした。トランプ米大統領は中国を標的にした敵対的な通商政策に乗り出しており、米中関係は曲がり角を迎えている。

中国はよく知られているように、人のつながりが政治や経済を動かす人治国家である。中国の動向を知るには人間関係の把握が欠かせない。習政権における人のつながりから、今後の経済政策について探った。

 

中国共産党にある3つの派閥

習近平氏が初めて政権の座についた2012年当時、中国共産党内には2つの政治勢力があった。ひとつは、江沢民元国家主席を中心とした上海閥と呼ばれるグループで、もうひとつは胡錦濤元国家主席率いるグループである。

江沢民グループは、鉄道省など経済利権と深く関わっており、国営企業が生み出す莫大な資金を背景に、共産党のあらゆるところに影響力を行使していた。

一方、胡錦濤グループは、中国共産主義青年団というエリート党員を育成する組織を母体とした党官僚グループであり、江沢民グループとは対立関係にあった。現在、国務院総理(首相)を務める李克強氏や、昨年の党大会で政治局常務委員に就任した王洋氏は、胡錦濤グループに属している。

このほか中国では、中国共産党創設メンバーや、その後、幹部に昇進した人物の子弟で構成される「太子党」という緩い派閥も存在している。簡単に言ってしまうと、利権で結びついた派閥と、党官僚の派閥が対立しており、ここに血縁関係による派閥がミックスされた図式といってよい。

習氏の父親は習仲勲元国務院副総理(副首相)なので、習氏は太子党ということになるが、江沢民グループとは一定の距離を保つ一方、胡錦濤グループとは対立関係にあったと言われている。

左から胡錦濤氏、習近平氏、江沢民氏 Photo by GettyImages

自身の後ろ盾だった江沢民氏を排除

習氏の総書記就任は江沢民氏の後押しで実現したことから、当初は、江沢民氏の傀儡政権との見方もあった。総書記就任後、習氏は胡錦濤グループの排除に動くかと思われたが、現実はまったく逆だった。

本来、対立していたはずの李克強氏と組んで、江氏の経済基盤であった鉄道省の解体を推進。その後、共産党の中枢施設が集まる中南海というエリアから、江氏を追い出してしまった。このあたりの詳細は不明だが、おそらく江氏に対する不満が党内に高まっており、習氏はこれをうまく利用した可能性が高い。

かつて田中角栄元首相の後ろ盾で首相に就任した中曽根康弘元首相は、当初「田中曽根内閣」と揶揄されるほど、田中派(現経世会)の影響が強かったが、いつの間にか、田中派の支配から脱却し、強固な政権基盤を獲得した図式と似ている。

共産党における最大勢力であった江氏の影響力を排除したことで、習氏の政権基盤は一気に強固になった。

ここで習氏は、ようやく胡錦濤グループの排除に動き始めた。

胡錦濤グループは、政府組織である国務院を権力基盤としており、李氏を中心に経済政策のキーマンが多かった。当初、中国は人民元の自由化や規制緩和など、自由主義的な経済政策を進めていたが、中国経済が失速したことで、その弊害が指摘されるようになってきた。

習氏はこれをチャンスと捉え、一連の経済政策の失敗を胡錦濤グループの責任であるとし、李氏の影響力を弱めることに成功した。

少し話が長くなったが、一連の経緯が習政権2期目における経済政策の前提条件となっている。では、2期目の習氏は具体的にどのような政権運営を行うのだろうか。