電撃的な解任劇だった。
日本サッカー協会が、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督との契約を解除した。彼が連れてきた3人の外国人スタッフとの契約も解除された。新監督には技術委員長を務めてきた西野朗氏が就任することも、合わせて発表されている。
4月9日の発表からほぼ2か月後の6月19日に、日本代表はロシアW杯の第1戦を迎える。Jリーグも海外主要リーグも5月中旬まで試合があるため、実質的な準備期間は3週間ほどしかない。
それでも監督交代に踏み切った理由として、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「3月のマリ戦とウクライナ戦で、選手とのコミュニケーション、信頼関係が薄らいできた」ことをあげた。
まるで教師のようにふるまうハリルホジッチ監督と選手の関係は、2015年3月のチーム結成当初から円滑とは言い難かった。ただ、W杯出場というわかりやすく揺らぎのない目標がある間は、選手たちから表立って不満の声は聞こえてこなかった。
ところが、予選突破後のテストマッチが不甲斐ない結果に終わると、「W杯までにやらなければいけないことは多い」といった声が選手たちから聞こえてくるようになる。控え目だった選手たちの不安が、はっきりと表面化したのが田嶋会長の指摘した2試合だ。
3月23日にベルギーで行われたマリとのテストマッチは、1対1のドローに終わった。4日後のウクライナ戦は1対2で敗れた。ワールドカップ出場を逃した2ヵ国に勝てなかったことで、選手たちはハリルホジッチ監督のサッカーへの不安や疑問を口にする。
「W杯までにやらなければいけないことは多い」との発言には前向きな意思が含まれていたが、3月の試合後は「このままではW杯では勝てない」との発言が増えた。否定的なニュアンスは覆い隠せなくなり、今回の解任劇につながったのだった。