Photo by iStock

「ゴミ屋敷の住人」たちとサシで話してわかったこと

ゴミに見えていたものも、実は…

「片付け」を始めるために必要なのは…

100円家事代行サービス「御用聞き」(東京都板橋区高島平)の代表である古市盛久さんは、同社のサービスの一つ「片付けられないお部屋」に取り組むうちに、こんなことを感じるようになったという。

「コミュニティに包摂されることによる効果・効能には、『誰かが気付いてくれる』『声を掛けてもらえる』『必要な人を紹介してくれる』『頼みごとができる』というのがあります。これは以前からよく言われていています。

しかし、今自分が一番注目している効果・効能は、『その人が生きるための原動力、エネルギーになる』ということなんです」

「片付けられないお部屋」とは、家族などに代わってゴミ屋敷・汚部屋整理などを行なうもの。「片付けられない」状態はほとんどが単身世帯において起こっており、その前段階には「社会的孤立」(家族や地域との関係が希薄で、他人との交流がほとんどない状態)があるのが特徴だ。

 

病気や失業などをきっかけに、部屋に籠りがちになり、外部とのコミュニケーションは減少、医療や福祉を拒否するケースも目立ち、その多くが心身の健康を損っている。このため、「お掃除をさせてもらいます」と部屋にお邪魔してみても、部屋の住人から早々と追い出されるのがオチだ。

ところが、古市さんは、あることを最優先に実行することでそのような失敗を免れている。それは、「部屋の住人と会話をする」ことである。

「当たり前なんですけど、一人ひとりに『〇〇さん』という名前で呼ばれる人格がある。ゴミ屋敷の中で、自分の糞尿にまみれながら、ネズミに腕をかじられていたりする以前の人生があったはずなんです。かつては会社員だったり、家族がいたりして、ごくごく一般的な生活を営んでいたわけです。

そこで、お片付けをする前に、住人の方としっかりお話をします。すると、ゴミに見えていたものが、実は購入したまま放置されていた未開封の背広であったり、悪臭を消すために購入した大量の消臭剤であることなどが分かってきて、なぜこんなことになったのかという核心のところにまで至れるんです。

私が、このような状態になる以前の人生について、『昔こんなことやっていたんですね。すごいですね』と言うと、相手も少しずつ気を許してくれて、心のつながりができるんです」

古市さんは、それを「『サシ・コミュニケーション』から『サシ・コミュニティ』(一対一のコミュニティ)が発生する」と表現する。

Photo by iStock

住人のテンションに合わせて傾聴する姿勢が重要で、「対等もしくは(住人が)上位にいられる関係性から、相手のこれまでの人生についての理解だけでなく、共感があると非常に効果的」なのだそうだ。

これによって、「心のスイッチが入ったように」過去の元気だった自分を現在の自分とシンクロさせ、スタッフとの会話を経ることで「未来の自分」が想像できるようになるという。

そうすると、本人の「片付け」への動機付けが明確になるため、無理なく実作業に取り掛かれるのだという。