​普段は福祉施設で働く女性が、ストリップという「沼」にハマる理由

静かに増える「スト女」の生態
菅野 久美子 プロフィール

こうして沼にハマるのか…

浅草ロック座では、1人の踊り子の持ち時間約10分ごとに、それぞれ何らかのテーマが設けられている。

例えば、私が一目で気に入ったみおり舞さんの「景」は、近松門左衛門の『曽根崎心中』がテーマだという。みおり舞さんは、青白い照明の中、白の衣装で、道行を口ずさみながらゆっくりと現れる斬新さだった。

白の衣装を脱ぐと、金色のメッキテープで作られたキラキラの衣装を身にまとったみおりさんが現れた。みおりさんは、狂おしそうに、悩まし気に、全身を使って躍動感たっぷりのダンスを踊ってみせた。

若い男女の心中という悲しく、重いテーマを全身全霊で表現するその姿には、真に迫るものがあった。もはやストリップというより官能の世界を紡ぐ創作ダンスであり、ダンスそのものがある種の感情のゆらぎを生み出している。そして、私はすっかりみおり舞さんの虜になった。

女性たちは、こんなふうにしてストリップの「沼」にハマるのだろう。

 

「見つめられると電流が走る」

その「沼」にハマってしまうと、女性たちも、男性と同様に一日中どっぷりとストリップ劇場で過ごすようになるらしい。

先に紹介したスト女のみどりさんもその一人だ。

「浅草ロック座に行くと、たいていは一日中劇場にいますね。昼から始まる5回公演を最初から最後まで見ます。まず後ろの方の席から座って、だんだん前の席に行くようにするんです。座る場所によって、見え方も全然違うんです。だって、こんなに安い金額で一日中いれるんですよ」

女性は、3500円。入れ替え無しのため、一日中滞在することもできる。

同じ公演を何度も繰り返し見て何が楽しいのかと普通の人は思うだろう。しかし、踊り子さんがこちらを意識してくれるとしたらどうだろうか。

「特に前の方に座ると、踊り子さんがこちらを見て、にこやかに笑いかけてくれたり、目が合うことが多いんです。この前の公演で、舞台の上の武藤さんと目が合った瞬間、ニコッとしてくれたんですよ! もう、体中に電流がビリビリって走っちゃいましたね」

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みどりさんは、そう言って、嬉しそうに笑った。

浅草ロック座は、日本で最も規模の大きなストリップ劇場。とはいえ、客席と舞台との距離は近いので、踊り子さんからも観客席はちゃんと見えるようだ。

つまり、みどりさんの話は、ファンの気のせいというわけでもないようである。

私は、ある踊り子さんが、お客さんと「色んな場所で見てたね」というやり取りをしているのをTwitterで目にしたことがある。さらに、Twitterでストリップの感想を書いたりすると、いいね!を押してくれる踊り子さんもいる。

踊り子さんは一公演の間、基本的に休みがない。風邪を引いてしまうと、穴を開けることになる。特に、浅草のように集団で踊るパートがあると代替はきかない。今冬はインフルエンザや風邪が大流行したが、武藤さんは、一日だけ体調を崩しながらも、翌日には復帰し、長い正月公演を30日駆け抜けた。

そんな踊り子さんたちの健気な姿にもみどりさんは、心底感動していた。

「どんなときだって、頑張ってしまう。だから武藤さんが好きなんです」