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​普段は福祉施設で働く女性が、ストリップという「沼」にハマる理由

静かに増える「スト女」の生態

いま静かに増えているという「スト女」。「男の世界」とのイメージが根強いストリップ劇場に、毎週のように通い、ハマる女子たちのことだ。

彼女たちは、いったいストリップの何に、たまらない魅力を感じているのか?自らも「スト女」ビギナーのライター・菅野久美子氏によるルポ。

踊り子が美しく宙を舞う

「推しの踊り子さんは、武藤つぐみさんです。正月公演? もちろん見にいきましたよ。武藤さんには、今まで手作りのクッキーとかお菓子を差し入れしているんです。ただ、彼女のアイドル的な活動よりは、あくまで、踊り子さんとしての姿が好きなんです」

スト女歴2年のいけだみどりさん(44歳)は、目を輝かせながらそう語る。

いけださんの「推し」の踊り子である武藤つぐみさんは、若手だが並外れたダンスセンスを持つ、実力派と呼ばれる踊り子だ。

今年の浅草ロック座の新春公演は、武藤さんだけでなく、ローザンヌ国際バレエコンテストのセミファイナリストで知られるみおり舞さん、そして、踊り子の重鎮的な存在として、圧倒的な表現力に定評のある沙羅(さら)さんなどといった実力派で固められていた。

私もこの正月公演には何度か足を運んだのだが、みどりさんの推す武藤つぐみさんの「景」(一つの幕を分割した単位のことで、順に一景、二景という言い方をする)には衝撃を受けた。

 

ストリップというと、今も艶めかしい媚態を演じ、一枚ずつ服を脱ぐだけというイメージしか湧かない人も多いだろう。しかし、ストリップは実は近年、ものすごく独自の発展を遂げている。

その一つが、武藤さんらが演じる「エアリアルティシュー」(エアリアルシルクとも呼ぶ)という演目だ。

エアリアルティシューとは、天井から吊るした長い布(ティシュー)を体に巻き付けて、空中を自由自在に飛び回るパフォーマンスのこと。サーカスなどでも使われており、いわばその空中演技をストリップに採り入れたのである。

武藤つぐみさんは、踊り子の中でも数少ないエアリアルが披露できる貴重な一人。このエアリアルによって、舞台は地上だけでなく空中へと飛翔する。

踊り子は3~4mも上から観客を見下ろし、自由自在にポーズを取り、あるいは回転しながら表現する。まるでアクロバットなサーカスのようなのだ。

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プロジェクションマッピングまで

13時の開演から、終わりは22時50分まで。1日5回、1回約1時間半のハードなスケジュールを駆け抜ける。入れ替え無しなので、観客は一度入場すると、朝から晩までずっと見続けることが可能だ。

正月公演の武藤つぐみさんの踊りは、その中でもかなり強烈なものだった。

女子高生のスタイルで現れた武藤さんは、プロジェクションマッピングで現代に甦った「北斎漫画」(※)とダンスバトルを行なうという、超異色なスタイルで「景」をスタートさせた。

そしてダンスバトルが終わると、半纏を羽織って、キツネの仮面をつけた武藤さんが、女狐の足取りでゆっくりと「盆」の前に進んできた。

深紅のエアリアルをくるくるとカラビナに巻き付けると、武藤さんは勢い良く赤のふんどしを取った。そして、半裸で布を身体に巻き、あっという間に上へと昇り詰め、回転技や逆さ吊りなどを披露した。

すると、うっすらと香水の匂いが辺りに漂ってくるではないか!

これも、距離の近さならではのハプニング。そのかぐわしいパフュームにドキドキしてしまっている自分に苦笑した。

かっこいい――!

思わずそう心の中で快哉を叫んだ。空中で変幻自在にくるくると体をくねらせる武藤さんに目が釘付けになる。たまに親指と薬指を立てる指のポーズは、〝キツネが憑りついた娘〟そのものだ。

顔を見せない演出が、逆に想像力を刺激して、縁日の見世物を見ているような、不思議な興奮へと誘う。武藤さんは最後の演出で、キツネのお面をかぶったまま、胸元をガバッとはだけた。徹底して地顔を見せない潔い演出だった。