売れてます!暗記しなくても知識が身に付く『日本史のツボ』

著者の本郷和人さんに聞く
本郷 和人 プロフィール

現代の我々は、平家が源頼朝を関東に配流したことを、「なんで反乱を起こしかねない侍が集まる地域に」と、不思議に思ってしまいますが、平安末期の人たちからすれば、関東とはそれくらい何もないド田舎のため心配していなかったということです。

時代が進んでもその感覚は残っていて、豊臣秀吉が、自分の領地より広大な関東を宿敵の徳川家康に与えたのも、間違いなく「左遷」なんですね。

―「軍事」の章で書かれている、家康をいつから「天下人」とみなすかの説明も驚きでした。

教科書的には、征夷大将軍になった1603年に天下人になったと捉える。でも、それはちょっと違います。なぜなら、1600年の関ヶ原の戦いの後、「どの大名にどこの土地を与えるか」という論功行賞の采配を、家康がやっている。

源頼朝が作った武士の「御恩と奉公」の関係が、家康と他の大名のあいだで結ばれているわけです。つまり、実情からすれば、1600年に徳川家が軍事を握って政権を確立、天下人になったと考えるべきなのです。

 

―日本史の見え方がガラリと変わるダイナミズムは、歴史のプロだからこそ出せる醍醐味ですね。

私の本業は鎌倉時代の史料の編纂であり、実証史学です。徹底的に史料を調べ込むことで、ひとつの事実から他の出来事にどう演繹したり、帰納したりできるかを体に叩き込んできました。

逆に言えば、これができなければ、他人に歴史の面白さ、奥深さを伝えることもできない。若手の研究者たちにも、歴史研究を「どう活かすか」という視点を忘れないで欲しいと願っています。(取材・文/伊藤達也)

『週刊現代』2018年4月21日号より