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日本初の女性シンガー・ソングライターが辿ってきた「数奇な半生」

世界の近現代史と密接にリンク
中川 右介 プロフィール

コンサートとCDと本と

コンサートにあわせて本を書こうと思い付いた加藤登紀子から、昨年12月に私は相談を受けたのだが、コンサートは4月21日と決まっているので、それに合わせて本を出すのは、かなり厳しい日程だった。

だいたい早くても発売後の2ヵ月前には原稿ができていないと難しい。

年明けに正式に朝日新聞出版から出すことが決まり、それから、すさまじいスピードで一章ずつ原稿が届いた。

自分のことと、これまでに調べてあったことを書くとはいえ、驚くべきスピードだったが、それは本の読者には関係のない話だ。

だが多分、そんな事情を知らない方が読めば、何年もかけてじっくりと書いた本だと思うのではないだろうか。

このタイトなスケジュールの仕事に、私が他の仕事をちょっと脇に置いてでも関わろうと思ったのは、かねてから、ミュージシャンにはもっと「本」を書いてほしいと思っていたからだ。

もう何十年も前から、コンサートとレコード(CD)は連動している。

コンサートツアーをするために新しいアルバムを出すのか、新しいアルバムを出すのでそれに合わせてコンサートツアーをするのか、ひとによっては異なるだろうが、ほんどのミュージシャンがツアーとアルバムとを連動させている。

だが、ツアーの会場でのグッズ売り場には写真集はあっても、読む本はない。

本も音楽も愛好する者としは、かねてからそれが不満だった。

もちろん、ミュージシャンは音楽で全てを語るべきだ、という考え方もある。

だが、本というのは、極めて自由度の高いパッケージなので、もっと利用していいと思っていたのだ。

加藤登紀子は、すでに2年前に、エディット・ピアフをテーマにしたコンサート(音楽劇と言ってもいい形のコンサートだった)を企画したときに、ピアフの評伝『愛の讃歌: エディット・ピアフの生きた時代』を書いて、出版した。

愛の讃歌、エディット・ピアフの生きた時代

『運命の歌のジグソーパズル』はそれに次ぐ、コンサートと、CDと本のメディアミックスである。

コンサートのMCは時間の制限もあるし、そう深い話はできない。だが本ならば、歌の背景について存分に掘り下げることができる。

それにコンサートには行けなかった人にも、本があれば、伝えることができる。

日本最初の女性シンガー・ソングライターである加藤登紀子には、コンサートとCDと本のメディアミックスを本格的に始めた、最初のシンガー・ソング&ブックライターでもあるのだ。

運命の歌のジグソーパズル加藤登紀子自身が出生から、引き揚げ、歌手デビュー、結婚、現在に至るまでの波乱の人生を、歌との出会いを通して描く書き下ろし自伝