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「古典は売れる」…いま『資本論』『幸福について』を漫画にする理由

「まんが学術文庫」創刊秘話
現代ビジネス編集部 プロフィール

なぜこの6冊なの…?

今回、この6冊を選んだ理由ですか。もちろん、ひとつひとつにちゃんとした理由があります。

たとえばショーペンハウアーの『幸福について』。これは、時代のニーズがあるだろうという読みからです。

実は、新潮社から出ている『幸福について』の翻訳書は、2011年から2017年にかけて何度も重版しているんです。累計では、50万部以上になっていると聞きました。やはり「幸福」というキーワードが強いのだと思います。

『嫌われる勇気』のアドラー心理学も、「幸福の哲学」と言われていますから。人生に問題があって、幸せとは何かを考えている人がたくさんいる。時代の要請が、たしかにあると感じていますし、その問いに答える漫画作品になっていると思います。

 

ゾンバルトの『恋と贅沢と資本主義』は意外なチョイスと思われるかもしれません。実は、最初の候補は「プロ倫」(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)で有名なマックス・ウェーバーでした。

しかし、それでは意外性がないでしょう。それに、ウェーバーの理論は日本人にも結構知られていますからね。だったら、彼の「対抗者」というべき、それでいて日本人にはあまりなじみのないゾンバルトがいいんじゃないかと。

20年ほど前ですが、経済学者の森永卓郎さんの講演を聞いた時のことが、いまでも頭の中に残っていました。森永さんはゾンバルトの『恋と贅沢~』を引きながら「恋をしましょう。全国民が好きな人にバラを一本買うだけで、GDPが上がる」とお話されたんですが、それが衝撃的で(笑)。こんなに衝撃的なゾンバルトの「経済理論」を知らない人も多いんじゃないか、と思って。だったら、知名度は劣るけれども、その衝撃に賭けてみたいな、と。

それに、ゾンバルトの『恋と贅沢~』は、漫画にすると面白いだろうという直感もありました。

例えば、16世紀に世界に覇を唱えたスペインとポルトガルが、なぜイギリスや、新興国のオランダに取って代わられたのか。それは、迫害を受けたユダヤ系の資本家たちが、イギリスやオランダにカネを移行したことが背景にあった……。このあたりの世界史や国際情勢に対する知識欲に訴えるところも、漫画にしやすいなと考えたんです。ぜひ、ゾンバルトの衝撃を、漫画で味わっていただければと思います。

今後も、ニーチェをはじめとした古典を、漫画化していく予定です。大学時代、古典に挑んで挫折した40代にも読んでほしいですし、漫画だから中学生にも読んでほしい。

石井氏自身も、日々古典を「学びなおし」中

いつの日か「『まんが学術文庫』を読んで、哲学にハマりました」という読者に出会えたら、これに勝る喜びはないでしょうね。

(取材・文/伊藤達也)

漫画学術文庫は4月11日創刊。詳しくはこちらをご覧ください。https://man-gaku.com/