これだけ労働時間を短くしても、日本人の疲れがとれない根本的原因

我々は、やっぱり無理をして生きている
梶本 修身 プロフィール

自然な労働時間は「1日2時間」

「ホーム」「アウェイ」という考え方も重要です。動物で言えば巣、人間ならば自宅などの「気を抜いて、疲れを癒やすことができる環境」がホーム、逆に「緊張を強いられる環境」がアウェイと定義できます。

通常、野生の動物の場合は、1日24時間のうちホームで過ごす時間が22時間程度で、アウェイに出向くのはわずか2時間程度にすぎないと言われています。

サバンナで暮らすライオンを例に取れば、獲物を追いかける時はもちろんアウェイに出かけますが、それは長くても2時間ほど。それ以外の時間は、自分の縄張りでのんびり寝て過ごしています。ホームの空間にいる間は、身の安全を確保する必要はありませんから、疲れません。

逆に言えば、ライオンが1日2時間しか出かけないのは、それ以上頑張ると疲れで身体を壊してしまう危険があるからなのです。犬や猫を飼っている方はお分かりかもしれませんが、他の多くの動物も同じように暮らしています。

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ところが現代人の多くは、24時間のうち10時間前後、勤め先などのアウェイで過ごしています。中には、睡眠以外のほとんどすべての時間を外で過ごす人も珍しくありません。生き物として、これはかなり不自然な状態です。

特に都会では電車通勤に片道1時間以上かかるという人も数多いですが、満員電車のように「超アウェイ」な状況に毎日3時間も閉じ込められれば、心身がおかしくなってしまうのも当然と言えるでしょう。

問題は、こうした特殊な状況が「たまに」ではなく、何十年もの間「ほぼ毎日」繰り返されるということです。肉体が本来は想定していないようなストレスが、エンドレスにかかり続けるーーそんな極めて特殊な時代に、私たちは暮らしているのです。

とはいえ、社会状況が根本的に変わらないかぎりは、このような生活から完全に抜け出すのは不可能でしょう。私たちは疲れと一生つきあってゆくしかありません。

だからこそ、正しい知識を持ち、少しでも疲れない工夫をし、きちんと疲れを取る方法を身につけなければ、健康に生きていくことはできないのです。

 

疲れを感じるメカニズム

では、そもそもなぜ、人はアウェイの環境で長時間過ごすと疲れを感じるのでしょうか。

それには「自律神経」のしくみが大きくかかわっています。

私たちは激しい運動をすると心拍数が上がり、呼吸が荒く大きくなります。体温の上昇を抑えるために、汗もかきます。こうした身体の反応を、刻々と切れ目なくコントロールしているのが自律神経です。

例えば身体を動かすと、自律神経が処理しなければならないタスクが増えます。その結果、脳細胞の内部で活性酸素が発生します。

すると、脳細胞は「酸化ストレス」とよばれる状態に陥り、本来持っている自律神経の機能が充分に発揮できなくなっていきます。これが「脳疲労」と呼ばれる状態です。このようなメカニズムで、私たちは「疲れた…」と自覚するのです。

アウェイに身を置くと、人は自然と緊張します。緊張の度合いが高まったとき、呼吸が速くなり心拍数が増すことは感覚的に理解できると思います。つまり「アウェイで過ごす」ということは、それだけで激しい運動をした時と同じように、自律神経が多くのタスクをこなさければならない状態になるということです。

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