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これだけ労働時間を短くしても、日本人の疲れがとれない根本的原因

我々は、やっぱり無理をして生きている

わが国は「疲労大国」といわれています。過労死という言葉を聞くことは日常茶飯事ですし、筆者も所属している文部科学省の疲労研究班が2004年に行った調査では、日本人のなんと60%が常になんらかの疲れを感じていることがわかりました。ほとんど全ての大人が疲れている──21世紀の日本はそんな国になってしまったのです。

にもかかわらず、疲労のメカニズムや正しい対処法は、あまり広く理解されていないことも事実です。

そこで本連載では、最新の研究成果をもとに、「疲れとは、そもそも何なのか」「どうすれば、疲れを少しでも取り除くことができるか」について、解説していきたいと思います。

 

日本人は、無理をして生きている

日本人の多くが疲れを感じているのは、なぜでしょうか。

決して昔に比べてひ弱になったからでもなければ、かつての日本人に特殊な能力があったからでもありません。最大の理由は、私たちが直面している「環境の変化」なのです。

現代人には慢性的に疲れを感じている人が多いと述べましたが、疲れの「度合い」には地域差があることがわかっています。ひとことで言えば、田舎に比べて都会で暮らす人は、より疲れを感じているのです。

それはすなわち、都会人が「生きているだけで無理をしている」ことを意味しています。

現生人類の歴史はおよそ50万年と言われますが、人間の遺伝子は、その間ほとんど変化していません。しかし、その一方で私たちを取り巻く環境は劇的に変化しました。

特に18世紀に起きた産業革命以降、文化文明は爆発的な発展を遂げましたが、50万年という長さに比べれば、この200年あまりはほんの一瞬に過ぎません。ほとんど誤差の範囲と言ってもいいでしょう。

私たちの肉体は太古の昔から比べて進化していないのに、私たちを取り巻く環境のほうは劇的に変化した。これが最大の問題なのです。

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とりわけ日本では、その変化が急激かつ顕著でした。

特に問題なのが、国土の狭さからくる人と人の「距離の近さ」です。見ず知らずの人と押し合いへし合いしながら満員電車に揺られ、職場に着くと、隣の席に座る人と肩が触れあいそうなほど狭いデスクに座る。食事をする際も、ファストフード店や牛丼屋などでは、隣席との距離が非常に近い店が増えています。

こうしたことは、自然界ではあり得ない状況ですから、そうした環境への対応方法は、遺伝子の中には組み込まれていません。当然、大きなストレスがからだにかかり、結果として「疲れ」を感じることになります。

理性をもつ人間だからこそ、こうした過酷な環境にも黙って耐えていますが。おそらく人間以外の動物をこのような環境に長時間閉じ込めれば、短時間で死に至るでしょう。例えば複数のラットをひとつの狭いケージに詰め込んで放置すれば、あっという間にケンカが起こり、あるいは強いストレスで、少なくともどちらかが死に至ります。

私たちが日々体験している「他人との距離の近さ」と「人口密度」は、ラットのケージよりもはるかに過酷です。まさに、生命の歴史になかった異常事態と言うべきレベルなのです。