中国のホストクラブで豪遊する「富裕層マダム」桁違いのマネー力

実際にホストクラブで働いてみたら…
西谷 格 プロフィール

ハンドバッグを財布代わりに…

深夜3時過ぎになってようやくお会計の段になり、ボーイが伝票を持って客に手渡す。ルルはソファの上に置いていたピンク色のイヴ・サンローランのハンドバッグを無造作につかんで開けた。

ちょうど隣にいたのでカバンの中をのぞいてみたら、大量の100元札が乱雑に放り込まれている。通常の長財布には現金が入りきらないため、ハンドバッグを財布として使っているのだ。

ヘルプで入った私には500元(約7500円)、指名を受けたホストには1500元(約2万3000円)がその場で客から支払われるシステムになっている。チップ1500元は「大杯(=グラス)15杯」という隠語を使った数え方をするのだが、この日のルルは酒と大麻で気が大きくなってしまっていたのだろう。指名した2人のホストには「今日は30杯あげる!」と言い出した。

上機嫌な女性客は一晩で約34万円支払った

周囲が「おお!?」と歓声をあげるとリーダーがさらに煽り、「じゃあ50杯いっちゃおう!」とけしかけた。ホストたちはさらに大きな歓声をあげて盛り上げる。この雰囲気に水を差すわけにもいかず、ルルは「わかったわかった、50杯あげる!」と言って、結局2人には合計1万元(約17万円)ものチップを支払ったのだった。こういう場面で即座に「50杯」という絶妙な数字を提示して払わせてしまうのは、さすがである。リーダーの力量を垣間見た。

 

この日の帰り際に先輩ホストにこっそり聞いたら、出張DJは2000元(約3万4000円)、飲み代は5000元(約8万5000円)ほどだったというから、この日は一晩で2万元(約34万円)近く浪費したことになる。

日本でもホストクラブではそのくらいのカネを使うと思われるかも知れないが、日本とは物価が違う。私が上海の寿司屋で潜入バイトをしていたときの給料は、月給2500元だ。その10倍近い金額が、一晩で消える。

ルルはその後、真っ赤なアウディに乗って帰宅した。運転は店のスタッフが代行していた。彼女は週に2~3回はこの店に通う常連だというから、金はほぼ無尽蔵にあるのだろう。

彼らの散財ぶりを批判するのは容易いが、日本人として無視できないのは、中国人富裕層が持つ桁外れのパワーだ。中華圏の富裕層を調査した「2017胡潤財富報告」によると、中国では940人に1人が1000万元(約1億7000万円)の資産を保有しているという。また、約368万戸が600万元(約1億200万円)以上の資産を保有しており、これは全戸数のおよそ114分の1に相当する。

日本の富裕層が高齢者に固まっているのに対し、中国人富裕層は若年層が多く、45歳以下が80%を占める。年寄りばかりが裕福な国と、現役世代に豊富なカネと消費意欲がある国……。中国人富裕層の豪快な遊びっぷりを見ていると、日本の未来が少し不安になってきた。

西谷格(TADASU NISHITANI)1981年、神奈川県生まれ。フリーライター。早稲田大学社会科学部卒業。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地の現状をレポートした。著書に『この手紙、とどけ! 106歳の日本人教師が88歳の台湾人生と再会するまで』ほか。『ルポ 中国「潜入バイト」日記』を今年3月末に発売。

(富裕層データ出典)
http://www.sohu.com/a/190172754_467135
http://www.stats.gov.cn/tjsj/pcsj/rkpc/6rp/indexch.htm
http://www.recordchina.co.jp/b30252-s0-c00.html